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【無人島7日目】ECD “失点イン・ザ・パーク”

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失点・イン・ザ・パーク

失点・イン・ザ・パーク

  • 作者: ECD
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2005/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


7日目。前回、「腰が痛いのー」てな話を書きましたが、なんだかなかなか痛みが引かないのでちょっと心配になって、昨日整形外科に行ってきました。レントゲン撮られて、触診されて、医者が言い放った一言。「まあ、老化現象ってやつですかね」。冗談で言ってんのかと思って、「ワハハ」って笑ったら、笑ってんのはオレひとりで、医者も看護婦もすんごい真面目顔。ワハハハハ。笑っとけ笑っとけ。



「失点イン・ザ・パーク」。タイトルがいいと思いません? 意味わかんないけど、響きがいいし、どんな内容だろ?って興味が湧く。ジャケ買いならぬ、タイトル買い。

作者はジャパニーズラップの草分け的存在である「ECD」。彼が40歳目前にしてアル中になり、レコード会社との契約を切られ、恋人にも捨てられ、入院し、そして退院してから職を探す意欲もなく、死んだように生き続けた日々の「記録」のような処女小説です。

アル中を題材にした作品っていうと、故中島らもの傑作「今夜すべてのバーで」なんかがありますが、この本は「アル中」という病気そのものよりも、それをキッカケに、自分の才能や人生に、どんどん「失点」していってしまう男の物語です。


仕事が見つからなかったらどうしよう、という不安が苦しいのではない。仕事なんかしたくない。ハローワークになんか行きたくない。このまま布団の中から出たくない。でもそれでは死んでしまう。

「死にたくはないだろ、死にたくはないだろ」

布団の中で天井を見つめながら、そう声に出して繰り返す。(本文より)


劇団ひとりの「陰日向に咲く」にも感心したけど、この人も「ホントに初めて?」って思うくらい、上手な物書きさんです。もともと自分でラップの歌詞を書いていたから、文章を作るのはプロなんでしょうが、構成も表現も独特で面白い。読んでいると、自分自身のことのような気がしてきて、グサグサと胸に突き刺さります。

で、なんで腰が痛いって話から、この本の紹介になったのかっていうと、自分でもよく分からんのですが、医者から発せられた「老化現象」っていうキーワードと、この厚顔の居候のように腰に居座るファジーな痛みが、なにやら「失点」という言葉をボクに思い浮かばせたのです。何言ってんだか。ワハハハ。笑っとけ笑っとけ。

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