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【以前の無人島34日目】劇団ひとり「陰日向に咲く」

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陰日向に咲く

陰日向に咲く

  • 作者: 劇団ひとり
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本

34日目。前回、ボクの仕事の話を少し書きましたが、もし今の職業についてなかったら、何をしてたんだろう?なんて時々考えます。ごく短い期間、営業職ってのについてましたが、恐ろしく向いてなかったなあ。いやマジ、あれはヤバかった。オレだってあんな後ろ向きの営業マンからモノ買いたくないもの。音楽は大好きだけど、楽器もできねえしミュージシャンにはなれんね。物書きはちょっと憧れるけど、長編小説とかは無理な気がする。絶対途中で辻褄合わなくなって、原稿破るな。うーん、オレってキャパ狭いかも。なんでもこなせる器用な人ってのに、憧れます。

最近話題のこの小説。劇団ひとりが、そんな器用な人なのかどうかは知りませんが、この処女作を読んで少なくとも文才に長けてる人なんだってのがよくわかりました。
全部で5編の短編が入っていて、すべてが微妙にリンクしているっていう、ある意味よくあるストラクチャーな小説ですが、ひとつひとつのストーリーが実にしっかり一本立ちしているのと、全体のトーンが統一されているので、読み終えると質のいい長編小説を読んだあとの気分にさせてくれます。それだけでもかなりのテクニシャン。
出てくる登場人物は、ホームレスだったり、アイドルのストーカーだったり、多額債務者だったりと、全員ちょっとダメダメな人々。劇団ひとりは、舞台で10人の劇団員を演じ分けるがごとく、それぞれのキャラクターの視点で世の中を見つめます。
例えば、消費者金融から金を借りまくって首が回らなくなってしまった、ギャンブル中毒の男のこんな独白。
「でも考えたら、誰から借りてる金かっていうと、未来の自分なんだよな。いや、もちろん金を借りてるのは業者からなんだけど、これを返すのは未来の自分なんだよ。つまり、今は貧乏で金のない自分が、未来の金持ちの自分から金を借りてるわけだ。魔法のカードで未来の自分とコミュニケーションよ。そう考えるとずいぶんとメルヘンな話だろ。」
なるほどね。そういう状況に陥ったことがないから気づかなかったけど、借金にまみれた人はこういう風にものごとを見ているのかもしれません。そんな感じの「う〜ん、なるほど」みたいな描写がたくさん詰まっている本です。
帯には「夜のピクニック」の作者・恩田陸氏のコメントで「ビギナーズ・ラックにしては上手すぎる。あと二冊はかいてもらわなきゃ」とありますが、まさにそんな感じ。器用って言葉は失礼かもしれない。ホンモノかもしれないです、この人は。

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