6日目。週末ジムで腰をやってしまいました。痛いです。普段のボクは、他人の5割増くらいのスピードでチャカチャカ歩くせわしない男なのですが、ここ数日、モーション年齢80歳くらいです。背後から声を掛けられても、振り向くまでに10秒くらい掛かっています。便所もギリギリまでガマンしてると、間に合わなくなりそうなので、早め早めを心がけています。笑点のメンバーチェンジには、物申したい気持ちでいっぱいです。すっかりじいさんモード。そんな時は聴く音楽まで、渋め渋めで。たとえば、コレ。
1970年にたった1枚だけフルアルバムを発表し、そのまま忽然とシーンから消えてしまったイギリスのシンガーソングライター「ヴァシティ・バニアン」。今から36年前に発表されたそのアルバム「Just Another Diamond Day」は、いまだに語り継がれるほど名盤の誉れ高く、現在でもアナログ盤は破格のプレミアプライスで売買されているのである。
されているのである。なんつって、実はそのアルバムは聴いたことありません。昨年たまたまCDショップで手に取ったのが、彼女が35年の沈黙を破り2005年に発表したセカンドアルバム「Lookaftering」でした。正直、ほぼジャケ買い。なにこの動物?ウサギ?キモッ!とか思いながら、棚に戻せなくなってしまいました。キモイ動物って好き。
正直ボクは彼女の持つ伝説性なんてどうでもいいんですけど、なんで35年もの長い間、彼女が音楽ファンから忘れ去られずにいたのかって理由だけは、このアルバムを聴いてなんとなく分かる気がしました。なんて言うんだろう、耳をすまさずにはいられない声っていうんでしょうか。か細くて、小さくて、でもしなやかに深い。
こういう歌の感じ、何かに似てるなあって思って、ずっと考えてたんですが最近分かりました。子供のころに母親にダッコされながら、胸の中で聴いた子守唄のあの感じに似ています。人を感動させようとか、上手に歌おうとか、そういう気負いのない歌声。ただ愛しいものが、安らかであれと願う声。この「Lookaftering」というアルバムに一貫しているのは、そういう愛の声です。
歌声とアルペジオ。そのシンプルな構成に、そっと手のひらを重ねるようにアコースティックギターが被り、空から光が舞い降りてくるようにグランドハープが溶け合います。たった35分の短いアルバムですが、そこには子供のころに確かに聴いた、混じり気のない愛の声が、奇跡のようにあります。
週末の夕方、「腰が痛いんじゃ〜」つって、じいさん気分でベッドに横になりながら、ひとりでこのアルバムを聴いていたら、マジで早めのお迎えとか来ちゃいそうでした。いや、そのぐらい至福っていう意味で。褒めてる褒めてる。聴けばわかる。