303日目。年の瀬でございます。2018年、みなさんにとってはいかがでしたでしょうか? 世間的には、今年の漢字に「災」という縁起でもない文字が選ばれてしまうほど、地震や豪雨や台風などの天災、企業の不祥事やハラスメント問題などの人災が目立った一年でした。個人的にはつい一週間ほど前に財布を紛失してしまい、久々に頭が真っ白になったのが何よりの思い出です(泣)。財布に入れていた複数のキャッシュカードやクレジットカードを全てストップしたら、手持ちの現金とSUICAの残チャージしか頼るものがなくなってしまい、なんとも自己破産をした人のような心細さを感じる年の暮れです。自業自得。ゴーン。
閑話休題。今年は素敵なライブをたくさん拝見しました。敬称略&時系列に挙げていくと、224日目に紹介した中島みゆき、193日目の吾妻光良 & The Swinging Boppers、153日目のタテタカコ、エド・シーラン、219日目のとんちピクルス、301日目の思い出野郎Aチーム、300日目の折坂悠太、298日目の宇多田ヒカル、296日目の竹原ピストルなどなど、どのパフォーマンスも印象的で、観ている瞬間だけでなく、余韻が数日後まで残り香のように漂う「名演」に多く出会いました。
個人的に今年のアルバム・オブ・ザ・イヤーを挙げるとすると、ヒカルちゃんの『初恋』や折坂くんの『平成』も捨てがたいのですが、「一番繰り返し何度も聴いた」という物理的な理由で、ボクはこの人のアルバムを選びます。
Ben Abraham(ベン・アブラハム)は、オーストラリア出身のシンガーソングライター。両親がミュージシャンだったこともあり、10代の頃から曲を作りはじめ、2014年に自主制作でアルバム『Sirens』を発表。このアルバムがレコード会社の目に止まり、2016年に改めて再リリースされると、高いソングライティングが話題となり、今年オーストラリアで有名な音楽祭「APRA賞」で審査員特別賞を獲得します。
以前は映像作家を目指していたというだけあって、ベンさんの作る音楽はどことなくシネマ的な要素を感じます。ファミリービデオで撮影されたプライベートな映像のようであり、でもその他人の思い出のシーンに、懐かしさを覚える一コマを見つけた時のような、甘美なデジャヴを感じさせてくれるのです。アメリカ出身のシンガーソングライター・Sara Bareilles(サラ・バレリス)とのデュエット曲もつけておきましょう。美しくも切ないお別れの歌です。
戻ってきてくれることを
ギリギリ期待してた
でも彼女の目は
さよならと言っている
言うべきだった言葉を
あえて飲み込んだ
沈黙はこんなにも
アテにならない痛みを避けるために
ゆっくり歩いたのに
結局解体用の
鉄球みたいになっちゃったね全部俺のせいだ
この期に及んで
痛みしか感じないの
愛する方法を
忘れさせたのは私?
粉々に崩れてても
望みはまだあるの?この星にいるうちに
もう一度やり直せないかしら
灰から不死鳥が蘇るように
炎が高く上がってもゆっくり歩いたのに
どうしたら避けられたの?
解体用の鉄球みたい
結局私たち全部私のせいね
財布の中に運転免許証も入っていたので、先日鮫洲まで再発行の手続きをしてきました。カウンターで「再発行したことはありますか?」と尋ねられたので「ありません!」とはっきり答えると、「履歴をお調べしたところ、昭和63年12月に再発行したことがあるようです」と。昭和63年……。30年前……。そういえば大学時代に、真冬の電車内に財布の入ったバッグ一式を置き忘れて、頭が真っ白になったことがあったような。あれから30年。すっかり変わってしまったような、何も変わっていないような自分と向き合いつつ、おとなしく年越ししたいと思います。みなさまもどうか、より良い一年をお迎えください。
ともかくも あなたまかせの 年の暮(小林一茶)