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【無人島284日目】Adele 『When We Were Young』

投稿日:2015年12月1日 更新日:

284日目。その時には特に意味があると思わなかった出来事でも、少し時間を置いて振り返ると、「ああ、アレはそういうことだったのね!」などと腑に落ちる場合がございます。例えばボクは25歳の時になんとなく思い立って、その時勤めていた会社を辞め、衝動的にフラフラ外国を放浪してみたりしたのですが、今から思えばあの時の「なんとなく」は、なかなかどうして、自分の人生に必要なタスクを、最適なタイミングで実行していたんだなぁと、この年齢になって分かるのです。不可抗力のような誰かとの出会いやお別れも、会うべき時に会うべき人々と出会い、結局は自分で取捨選択してきたのだと、後になって気づいたり。「偶然なんてないんだよ」という運命論ではなく、すべての出来事は、少し後になってから、その姿形があぶり出しのように現れてくるものなのだと、最近思うのです。

先月アデル姐さんがリリースされた4年ぶりのアルバム『25』が、全世界でバカ売れだそうです。アメリカでは発売初週だけで300万ユニット(CD販売とデジタルダウンロード数の合算値)を記録し、これはかつてジャスティン・ティンバレークが所属した「イン・シンク」が2000年に記録した242万を大きく上回るのだとか。イン・シンク! 懐かしいな。

11月20日にリリースされてから本日まで、わずか2週間弱しか経っていないワケですが、すでに先行シングル『Hello』のカバーがワンサカ出回っております。その中でもボクが秀逸だと思ったのはコレ。

 

アメリカはユタ州出身の「Foreign Figures」というバンドのカバー。この歌のもつ激しさは、確かにハードロックにうまくハマりますな。

 

イギリスはケンブリッジのシンガーソングライター「Alice Olivia」さんのカバー。なんつうか本家の歌唱よりも、「業」のようなものが際立って聴こえます。ちょっと怖い。でもゾクゾクします。

『Hello』に続き、アルバム発売直前にドロップされたのが『When We Were Young』。ボク的には 『Hello』よりもこちらのほうがハマりました。スゲー好き。こちらのカバーも見つけたので貼っておきます。

 

ニューヨークで活動するアカペラグループ『Apollo Link』のカバー。後年「アデルの最高傑作」と呼ばれてもおかしくないほどの名曲ですから、あえて楽器でアレンジせず、アカペラでカバーするのは正解かも知れません。決して緻密なハーモニーではありませんが、徐々に熱量が高くなるエモーショナルなコーラスがとてもステキです。

この光の中で あなたの写真を撮らせてね
もしかしたらこれが 最後かもしれないから
何も知らなかったあの頃のまま 写れるかもしれないのは
年をとることが悲しくて 落ち着かない気持ちになった
あの頃が映画のよう あの頃が歌のよう
(CD歌詞対訳より)

アルバムタイトルの『25』とは「25歳の時の自分」という意味で、これまでのアデル姐さんのアルバムはすべて、数年前の自分の年齢を冠しています。20歳の時に『19』、23歳の時に『21』、そして今年27歳で『25』。彼女は常に、いまその時の自分ではなく、数年前の自分を俯瞰しながら、楽曲を紡いでいらっしゃるのです。

20歳でデビューし、23歳でグラミー賞を総ナメし、24歳で出産を経験。のほほんと生きてきたボクとは違い、ジェットコースターのような人生を歩んでいる彼女にとっては、2年前の出来事も「映画のよう」に映るのかもしれません。かのエイミー・ワインハウスのように生き急ぐことなく、5年後10年後も、その卓越した俯瞰力と表現力で、凡人の描けない世界をあぶり出してほしいと思うのです。

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