231日目。英国のシンガー・ソングライター、エイミー・ワインハウスさんがご他界されたそうです。生涯でたった2枚のアルバムしか残していないにも関わらず、その類い稀な才能とスキャンダラスな人生で、03年のデビューからあれよあれよと英国で最も人気の高いアーティストの一人となったエイミーさん。ビリー・ホリデイの再来と呼ばれたその甘くハスキーな歌声は、ビリー・ホリデイと同じくドラッグに蝕まれ、あえなく天に召されました。享年27歳。「まだまだこれからの人だったのに」と誰もが惜しむ、天才ミュージシャンの急逝でした。
27歳で亡くなったミュージシャンのことを『Forever 27 Club』もしくは『Club 27』と呼ぶのだそう。ブライアン・ジョーンズ(ローリング・ストーンズ)、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスン(ドアーズ)、カート・コバーン(ニルバーナ)らがメンバーとして名を連ねるこのクラブは、若くしてミュージシャンとして名を馳せ、奇しくも同じ27歳にしてその人生にピリオドを打った若き天才たちの総称。知らず知らずにエイミーさんも、そのクラブに呼ばれていたのかも知れません。
『Club 27』のメンバーに共通するのは年齢だけでなく、彼らの死が薬物に関わるものだったことも挙げられます。溺死、窒息死、心臓発作。それぞれ死因は違えども、ヘロインやエクスタシーなどのドラッグの乱用が、結果彼らを死に追いつめていたことは事実です。ボクは、そんなドラッグによる悲劇を耳にするたびに、この歌を思い出します。
チャンスを待ちわびている
すべてがチャラになる瞬間を
いつも何かにイライラしながら
1日を終えるのはもううんざりだ気晴らししたい 解放されたい
記憶を血管から抜き取って自分を空っぽにする
身軽になったその瞬間に
至福ってやつに会えるかも知れない天使に抱かれてここから飛び立とう
この薄汚いホテルの一室から
この身の毛のよだつ永遠から
音のない妄想の瓦礫から天使に救い出されて
ようやく安らぎを見つけるんだ、僕は
カナダの女性シンガー・ソングライター「サラ・マクラクラン」の98年のヒット曲『Angel』は、その前年に「Smashing Pumpkins」のメンバーが薬物で急死したことにインスパイアされて作った曲だと、本人が語っています。
「八方塞がりで身動きが取れず、もう自分が誰なのかも分からないくらい最悪な時、そこから逃げ出す方法があればすがってしまうのは分かる。でもそれはヘロインだけじゃない。エスケイプする方法は他にもたくさんある」。(サラ・マクラクランのインタビュー記事より抜粋意訳)
長生きすることだけが幸せだとは思わないし、27歳までになにかを極め完結させたその人生に憧れを覚えないと言えば嘘になりますが、それでも年長の音楽ファンとして、エイミー・ワインハウスにはやっぱりもっと生きていてほしかったし、あのベルベット・スモーキーな歌声がこれからどんな風に年を重ねるのか、ボクは聴いてみたかった。いつかあの世で『Club 27』の特別セッション・ライブを観る日まで。R.I.P.