- アーティスト: 竹内まりや,Alan Jay Lerner,杉真理,山下達郎,服部克久,センチメンタル・シティ・ロマンス,Piccadilly Circus
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/05/16
- メディア: CD
101日目。「50歳代の半ばを超え、死の瞬間が確実に近づいていることはよく分かります。30年前のことや20年前のことをオンリー・イエスタディとして思い出せるけど、肉体は確実に衰えています。いまいましくも、その事実をよく承知しています。自分の人生はとりあえず70年、そう勝手に決めています。残すところもう15年もない。その時が一瞬の後のように到来するでしょう。夏休みをあと10数回、ゴールデンウィークもあと10数回、お正月も花見もそうだ。だから1回1回を真剣に生きようと思うけれど、そう思えば思うほど、センチメンタルな感情がこみ上げてきて、涙が出てきてしまう。涙で目がかすむ回数がとみに増しています」。
冒頭は、今読んでいる見城徹著「編集者という病い」という本の、前書きからの抜粋です。見城氏は50年生まれの「団塊の世代」。69年生まれのボクとは二周りほど違うので、彼のこの吐露を、わかるわかる、なんて簡単に言うのは失礼に当たるでしょうな。
でもなんというか、わからないなりに、グッと来ます。いつの時代も、ちょっと前を歩く人たちの言葉や作り出すものは、いつもわからないなりに心に残り、あとになってようやくその意味が分かって、改めて反芻するものなのでしょう。ボクにとって、団塊の世代と呼ばれる人たちは、いつもそんな存在でした。
沢木耕太郎、47年生まれ。村上春樹、49年生まれ。さだまさし、52年生まれ。中島みゆき、52年生まれ。松任谷由実、54年生まれ。ボクはこの世代の人たちの作った歌や本に、大きな影響を受けて育ちました。まだ10代の、何も知らなかった時期に、彼らの歌や文章を、100%は理解できないなりに、確実に自分の血や肉として、取り込んできたように思います。
55年生まれの竹内まりやも然り。中高校生のころに聞いた、「本気でオンリーユー」「マージービートで唄わせて」「元気を出して」などは、うがーこれが大人の恋ってやつなのかー!と、これから訪れるだろう自分の大恋愛に思いを馳せながら、身を捩りつつ聴いておりました。結局大したモンは来ませんでしたけどねー。うがー。
そんなボクにステキな恋の予感を授けてくれた人が、50歳を過ぎ、変わらぬ美声で、こんな歌をうたうようになったのかと。中島みゆきが「重き荷を負いて」で歌った、佳境を過ぎた人生という名の旅路を、竹内まりやの言葉にするとこうなるんでしょうな。やっぱりいまだに100%は理解できないなりに、羨望と憧れをもって、聞き惚れてしまうのです。
春がまた来るたびひとつ年を重ね
目に映る景色も少しずつ変わるよ
陽気にはしゃいでいた幼い日は遠く
気がつけば五十路を超えた私がいる
信じられない速さで時は過ぎ去ると知ってしまったら
どんな小さなことも覚えていたいと心が言ったよ
I Say It’s Fun To Be Twenty
You Say It’s Great To Be Thirty
And They Say It’s Lovely To Be Forty
But I Feel It’s Nice To Be Fifty
満開の桜や色づく山の紅葉を
この先いったい何度見ることになるだろう
ひとつひとつ人生の扉を開けては感じるその重さ
ひとりひとり愛する人たちのために生きてゆきたいよ
I Say It’s Fine To Be Sixty
You Say It’s Alright To Be Seventy
And They Say Still Good To Be Eighty
But I’ll Maybe Live Over Ninety
君のデニムの青が褪せてゆくほど味わい増すように
長い旅路の果てに輝く何かが誰にでもあるさ
I Say It’s Sad To Get Weak
You Say It’s Hard To Get Older
And They Say That Life Has No Meaning
But I Still Believe It’s Worth Living
But I Still Believe It’s Worth Living
まだ死を意識するほどではないけれど、人生の折り返しくらいには来てるという実感はあります。あと10年、あと20年経った時、「It’s Worth Living」と言えるような人生へ、ちゃんと真っ直ぐ歩いて行くためのヒントを、この「Denim」というアルバムから、100%は理解できないなりに、教えられたりしました。