113日目。チョー遅ればせながら、映画『バベル』を観てきました。菊地凛子さんのアカデミー賞ノミネートで、日本でも大きく取り上げられたこの作品。でも映画観た人に「どうだった?」と聞くと、一様にして「う〜ん……」みたいな反応が多かったので、そういう感じなのかあと思って、あまり期待せずに観たんですが、オモロイやんけ。オレは好きやけどな。あの「あん時ああしてなければ……」っていう、後悔のドミノ倒しのような、悲劇の連続の最後に見えてくる、一条の光。たぶんそんなものはないほうがよく眠れるはずの、忌々しいかすかな希望。「通じ合えない」という共通項だけを持つ、複数のバラバラな出来事を絡めながら、ひとつのカラーに落とし込んでいくに手腕は、さすがイニャリトゥ監督。音楽もよかった。
映画『ブロークバック・マウンテン』で、05年アカデミー・ベストスコア賞を受賞したグスタボ・サンタオライヤが『バベル』のオリジナル音楽を手掛けていますが、印象深いエンディング・シーンで使われていたのは、坂本龍一の「美貌の青空」でした。確かアカデミー賞でも、『バベル』の作品紹介の時はこの曲が使われていたし、事実上のメイン・スコアと呼んでいいでしょう。ちょうど、そのエンディング・シーンのみのYouTubeを見つけたのでつけておきます。これから映画を見る人は、絶対見ちゃダメですぜ!
「美貌の青空」は、95年のアルバム「SMOOCHY」に収録された曲で、オリジナルには売野雅勇の歌詞がついていて、教授自身が歌っています。翌96年に発表されたベスト・アルバム「1996」でインストルメンタル・バージョンが収録され、04年のベスト「/04」にも、ほんのちょっとだけ長い別バージョンが再録されていて、こちらが映画で使用されたもの。ピアノとチェロとバイオリンのみのシンプルな構成ながら、どこかしら胸の痛みすら覚える感傷的な始まりから、やがてピアノの旋律を裏切っていくチェロとバイオリンの不安感を伴うクライマックスへの対比が見事です。
アルバム「/04」にはそれ以外にも、CMでおなじみの「Asience」や、YMO時代の「Perspective」の教授自身の弾き語りなどが収録されています。特に教授が「10年に1曲と思うほど気に入っている」と語るプレステ2のソフト「SEVEN SAMURAI」のエンディング用に作られた「Seven Samurai – ending theme」は秀逸。ボクの「弱ってる時に聴く曲リスト」のかなり上位にいます。どんなリストやねん。
映画に関してもう少し書くなら、確かに「ちょっと不自然ちゃう?」と違和感をおぼえるシーンもあるのです。凛子はなにであんなことしてん?とか、モロッコの子供はほんとにあんなか?とかね。でもそんなこんなも含め、この「美貌の青空」をエンディングに持ってきたことで、なんかかなりいい感じの映画になっとるのです。音楽ってスゴイなと思うし、それを選んだ監督もやっぱスゴイと思うんです。