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【無人島166日目】Boyce Avenue “Acoustic Sessions”

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Love Generation 2

Acoustic Sessions, Vol. 1

  • アーティスト: Boyce Avenue
  • 発売日: 2008/04/22
  • メディア: CD

166日目。近年はインターネットの発達により、誰もが自分の作品を自由に発表できるようになりました。ブログにしかり、YouTubeにしかり、Mixiにしかり、MySpaceにしかり、不特定多数の人々に自分の文章や音楽を発信し、それがモノによっては大きな反響を呼び、一般的なビッグヒットに結びついたりするのも、もう決して珍しくはないです。才能があれば誰でもチャンスがあるという意味ではとても良いことですが、逆にネットの特性や使い方をちゃんと理解していないと、なかなかどうして使いこなすのが難しいツールでもあります。今日は、才能とネットの特性を上手に駆使して、徐々に知名度をあげてきているこのバンドの紹介です。

Boyce Avenue(ボイス・アベニュー)。まだほとんどの人が知らないと思います。いまだレコード会社も決まっていないし、今ネットで調べたところWikipediaにさえも、名前が登録されておりませんでした。一般的には限りなく無名に近い、アメリカ・フロリダ州出身のバンドです。
男性4人組のうち3人が兄弟で、高校時代から兄弟バンドとして地元で活動はしておったのですが、それぞれが進学などでやがて離ればなれになり、バンドは休止状態に。04年、長兄のダニエル君が大学を卒業するとともに活動を再開し、末っ子のアレサンドロ君がソングライティングとボーカルを担当。その伸びやかなボーカルはライブを中心に評判を呼び、地元のコンテストなどで多くの賞を獲得しました。オリジナル曲もたまり、昨年は自主制作のアルバムも作りました。
さて、ここからはボクの想像ですが、彼らは考えたんだと思います。
ダニエル「ヘイ、兄弟。これからオレたち、どうやって売っていこうか。」
アレサンドロ「演奏は評判が高いよね、オレたち。」
ファビアン(次男)「アレサンドロの声も超いいってみんな言ってるぜ。」
ダニエル「……でもよ、オレたち、ルックスどうよ?」
アレサンドロ&ファビアン「……うーん。」
ダニエル「いきなりオリジナルアルバムで勝負するよりさ、ネットで試してみないか?」
ファビアン「賛成! 最近そういうの流行ってんじゃん!」
アレサンドロ「試すって、オリジナル曲やるの?」
ダニエル「違う。最初は食いつきのいいカバー曲をやるんだ。受けのよさそうなバラードとかで人気になって、それから満を持してって感じでオリジナルをドロップってワケよ」
アレサンドロ&ファビアン「兄貴、さすが〜!」
きっとそんな会話があったんだと思います(ホントか?)。とにかく、彼らは自慢のオリジナル曲を一度封印し、今年に入ってからYouTubeやMySpaceに、カバー曲の演奏をアップしまくります。その数、YouTubeだけでも40曲以上。

ボクは、このアレサンドロ君のギターソロで録画した、Leona Lewis『Bleeding Love』のカバーに一発でやられ、iTunesでダウンロード販売されている彼らのアルバム『Acoustic Sessions』をVol.1からVol.3まで、すべて購入してしまいました。楽曲が素晴らしいのはもちろんですが、ギター一本の弾き語りで、ここまでこの歌を表現できるのは、ホントにスゴいと思う。
他にもRihannaの『Umbrella』や、Madonnaの『4 Miutes』、Coldplayの『Viva la Vida』など、昨年から今年にかけて大ヒットした曲を、ガンガンにコピーしています。全曲アコースティックかつオリジナリティがあって、素晴らしい。そして何よりウマいのは、その中にさりげなく、彼らのオリジナル曲を混ぜたりしているのです。ちょっとセコい! だけどウマい! 並んでたら思わずクリックしちゃうこのネットの特性を使って、上手に自分たちの実力と作品を浸透させているのです。これぞ、マーケティングですな。
今年、この『Acoustic Sessions』シリーズと、オリジナル曲を集めたフルアルバム『All You’re Meant To Me』を、iTunesなどでネット販売を開始。地元フロリダでは、ライブもコンスタントに行い、その人気を徐々に全国区に広げつつあります。実はボクはオリジナルのほうは買ってない(ヒドい)のでなんとも言えませんが、彼らの表現力と演奏力があれば、結構売れていくかも知れません。
なにはともあれ、ネットがなければ決して知り得なかったし、逆に言えば彼らは、アジアの端っこの国に住むボクなんかにもちゃんと情報が伝わるくらい、上手にネットを使ったマーケティングをしてるということでしょう。そして、ちゃんと伝わるだけの実力を持っている。その両立はとても難しいことだと思うのです。

-CD

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