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【無人島299日目】Tom Walker 『Just You and I』

投稿日:2018年1月5日 更新日:

299日目。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。うっかりすっかりブログ更新をサボってしまっておりましたが、みなさまにはお変わりございませんでしょうか? 年越しはいかがされていましたか? ボクは、大掃除をすることもなく、初詣の準備をするでもなく、ただ紅白をボーッと観ながら、年末セールで買ったウィスキーをちびちび舐め、スーパーで買った蕎麦をすすっておりましたところ、つるりと年が明けておりました。年々、一年と一年の境がぼんやりになっていくのは、老化のせいでしょうか? 生来がぼんやりだからでしょうか? 「貸借も なくてめでたし 大三十日(おおみそか)」と詠んだのは村上鬼城ですが、まあ、大病を患うわけでも、借金を抱えるわけでもなく、無事年を越せたのですから、良い一年だったと言って良いでしょう。よくやった、俺。上出来、上出来!(←自分に甘い)

酔っ払おうぜ!
吐き出すように想いを注いでやるよ
今年はハードな一年だったな
より良き来年に乾杯!

乗り越えてきたことのすべてが
これからもうまくやっていける証だよ
お前だけが俺の気持ちを分かってくれる
お前にはなんだって言えるんだ
お前はジャッジしたりしない
ただ黙って俺の話を聞いてくれる

お前に出会えたのは最高の出来事だ
お前と俺ならなんだってできるさ
一歩ずつ行こう お前と俺で
太陽みたいに光を差し込んでくれ
一歩ずつ行こう お前と俺で

カサつきながらも暖かみのある、冬の陽光のような歌声。一聴してイギリス出身だと分かる癖のあるアクセント。シンプルながらも耳に影を残すようなメロディーライン。そして前向きでストレートなリリック。昨年ボクが新しく知り得たミュージシャンの中で、一番胸を鷲掴まれた、トム・ウォーカー(Tom Walker)の『Just You and I』という曲です。

トム君は、イギリス・マンチェスター出身の弱冠26歳。2016年にデビューし、今日までにシングル7枚とミニアルバム1枚をリリースしている新人さんです。が、批評家の評価は高く、昨年6月には有望な新人に贈られるBBC Radio1の『Brit List』にリストアップされ、9月からは初のUSツアーを敢行。10月にドロップした新曲『Leave a Light On』は、エド・シーラン(Ed Sheeran)やクリーン・バンディット(Clean Bandit)などを手がけたプロデューサー、スティーブ・マック(Steve Mac)がアサインされています。初のオフィシャルPVも完成したようなので、貼り付けておきましょう。

トム君は、同じイギリスのシンガーソングライター、サム・スミス(Sam Smith)とほぼ同い年ですが、高音のファルセットで洗練かつ繊細なイメージのサム君に比べ、野太いしゃがれ声で、熱く、でもどこか暗さのあるトム君。UKの先輩なら、デヴィッド・グレイ(David Gray)やパオロ・ヌティーニ(Paolo Nutini)の系譜でしょうか。いずれにせよ、数年前のサム君のように、今年大化けする予感でいっぱいのニューカマーです。

前述の『Just You and I』の歌詞は、おそらくラブソングなのでしょうが、ボクのイメージでは、大晦日に片田舎のパブで、相棒と肩を組みながら、ギネスのパイントを一気飲みする、貧しくも幸せなブルーカラーの若者たちが浮かびます。「お前に会えて本当に良かった」なんていう、こっぱずかしい台詞を、酔った勢いと店の喧騒に乗せて大声で叫び飛ばすような、陽気でハイテンションで、でもどこかセンチメンタリズムが紛れ込んでいる大晦日の夜。カウントダウンを合図に窓に映る打ち上げ花火に気勢を上げ、また明日から問題山積みの日常へと戻っていく。そんな、言葉にすると遠ざかってしまう情景や感情を、トム君の声は短く鮮やかに切り取って見せてくれているような気がするのです。

私事ですが、昨年は引越しを試みたり、新しいことに挑戦する機会に恵まれたりと、慌ただしくも充実した一年を送ることができました。さてはて、今年は一体どんなことがあるのでしょう。いずれにせよ、目の前に現れることをひとつひとつ片付けながら、今年の大晦日には、酒場で仲間たちと「上出来、上出来!」と肩を叩き合えるような、そんな一年にしたいと思っています。(←今年も甘い)

よく光る 高嶺の星や 寒の入り(村上鬼城)

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