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【無人島269日目】ヘンリー・ディヴィッド ソロー 『孤独の愉しみ方』

投稿日:2014年9月5日 更新日:

269日目。もうすでに1ヶ月ほど前の話になりますが、アメリカの名優、ロビン・ウィリアムズ氏がご他界されました。ガープの世界、グッドモーニング・ベトナム、いまを生きる、フィッシャー・キング、グッド・ウィル・ハンティング。いつも抑圧的な体制に押しつぶされそうな弱者の側に立ち、正義を貫くために身を挺して戦う等身大のヒーローを、飄々かつ颯爽と演じておられました。特に『いまを生きる』は、当時まだ大学生だったボクの、自我と他我に迷うフニャフニャでグニョグニョの「自己意識」というぬかるみに、ガツンと大きな杭を打ってくれた映画でした。物事を深く考えること、孤独を愛すること、自然を愛し詩を読むこと。映画を観ながら、あのパブリックスクールの教室に自分も席を置いているかのような気持ちで、キーティング先生の型破りかつ思慮深いその一言ひとことに、背中を押されるような、なにかを許されたような、不思議な気持ちになったものでした。オーキャプテン、マイキャプテン。

今年の初旬に放映されていたアップル社のiPad AirのCMで、『いまを生きる』のキーティング先生のモノローグに、映像と音楽を重ねた印象的なコマーシャルがありました。オリジナルのシーンはこちらからどうぞ。

ボクはこの映画を通じて、ウォルター・ホイットマンやヘンリー・デイヴィッド・ソローというアメリカの偉大な詩人の名前をはじめて知りました。特に「死せる詩人の会」の冒頭で朗読されるソローの一節には、ひどく感銘を受けたことを覚えています。

森へ行ったのは、思慮深く生き、人生の真髄を知るためだ。生活でないものは拒み、死ぬ時に後悔のないよう生きるためだ。森の分かれ道では、人の通らぬ道を選ぼう。それですべてが変わるだろう。

ソローは1817年アメリカ生まれ。ハーバード大学を卒業するも生涯定職にはつかず、マサチューセッツ州のウォールデン池湖畔に小屋を建て、自足自給の生活を続けた変人、違う、思想家で、後にその生活の記録を綴った『ウォールデン〜森の生活』を発表。1862年に結核で他界した後、書き留めていた日記や書簡が次々に出版され、自然文学の巨匠として今も根強い人気を誇る詩人です。

映画に感動した当時のボクは、早速『ウォールデン〜森の生活』を購入しましたが、読んでみるとかなり哲学的かつ散文的な作品で、ボクの読解力ではとても歯が立たずに読了ならず。つい最近、本屋で『森の生活』に書かれているソローのエッセンスを、見開きでひとつの言葉を取り上げ、分かりやすく説明している『孤独の愉しみ方―森の生活者ソローの叡智』という本を発見し購入。四半世紀ぶりにソローの言葉と向き合ってみました。

誰にも出し抜かれない生き方がある。それはゆっくり歩くことだ。

しょっちゅう人に会いに行く。そんな習慣が互いの尊敬心を失わせる。

人間のすべてを耕してはいけない。森を残しておけ。

うーん。やっぱ変人、違う、思想家。でもこの年齢になったからでしょうか、ぼんやりと言ってることは分かる気がするのです。「厭世」とも「清貧」とも違う、他者を求めるがゆえの「美学」のようなもの。好きだからこそ距離を置いてしまう、不器用な男の強がりにも似た吐露。きっと誰よりも熱く情熱的で、「人間」を愛していた方だったのでしょう。

役柄とは言え、そんな先人の言葉をボクに伝え残していってくれたのが、ロビン・ウィリアムズ氏でした。笑顔に奥にある深い知性を宿した瞳をボクは忘れません。オーキャプテン、マイキャプテン。ボクは今でも、思慮深く生きたいと願いつつ、あの教室の机の上に立ちすくんでいます。R.I.P.

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