13日目。もうすっかり年の瀬。ここは夢の無人島なので、ちょっと気分出してほしいなぁなんて思ったりすると、うまい具合に雪がチラチラと降ってきたりします。カチカチに凍てついたガラス窓の向こう、葉を落とした大きな木が、まるで寒さを厭わない強靭な老人のように佇んでいます。こんな風景をいつか見たことがあるな。そう、ずいぶん昔に何度も繰り返し見た景色なんです。
子供の頃、ボクは夜寝る前に必ずかあちゃんに絵本を読んでもらっていました。しかも気に入った本があると毎晩繰り返し読ませるので、かあちゃんの方がいい加減飽きてしまい、「こっちの本はどう?」なんてさりげなく違う本をプレゼンしてきたりするのですが、ボクは男らしく黙って首を振り、もうボロボロになりかけているお気に入りをかあちゃんに押し付けると、かあちゃんはため息まじりながらも読んでくれるのでした。
そんな思い出の絵本のひとつが、この「モチモチの木」です。ボクに「大切な人を失うという恐怖」と「やるときゃやれ!」という、人として肝心な部分をインプットしてくれた本です。幼少のボクは、毎晩豆太になって、夜道を泣きながらじさまのために走りました。雪の降る霜月の晩、豆太がやっと見ることのできたモチモチの木に灯のともった景色は、ボクの記憶に「勇気」という原風景として刷り込まれ、今でも枯れた大木を見上げるときは、そこに色とりどりの灯がともっている絵を思い浮かべたりしています。
最近本屋で改めて購入し読み直しましたが、大人の視点で読んでもマジで名作です。斎藤隆介のやさしい方言を使った文章と、滝平二郎の怖さと優しさを兼ね備えた切り絵。今読むとストーリー的には「花さき山」のほうが好きなんですけど、やっぱ男の子だったんで「モチモチの木」のほうが印象深かったのかな。
しかし読み直したら、じさまは64歳だと判明。64であの老けっぷりはスゴイっす。