234日目。週末、ボクの心の妻であるところのタテタカコ氏のライブを観てきました。場所は吉祥寺のOngoingという小さなギャラリーで、客も40人限定という小規模ライブ。心の妻はここ数年、毎年1回のペースでこのギャラリーでライブを開催しておるとのこと。しかも、別の男と。別の男って。その野郎の名前は「ヌルマユ永井」。人の心の女房となにさらしてんねん!ってことで、ライブに行く前にボクはこの、心の間男をネットで調べ上げたのでございます。そして見つけたのが、2008年にライブハウスで撮影されたこの動画でした。
遠藤ミチロウの狂気と、envyの破壊力と、吉野寿の繊細さをマーブルチョコにしたような世界観。かつて戸川純が、好きな人を想いながら木の根元で虫のサナギになる女の歌をうたっていましたが、この歌もまた、想いの報われない時に起こる人の心の歪(いびつ)な腐食を、水の底の暗く深い場所で歌い上げています。
すっかり心の妻の間男に恋(←複雑)をしてしまったボクは、さらに検索を重ね、「ヌルマユ永井」が実は「ヌルマユ」というツーピースバンドの片割れで、相方でドラムスの中村氏が体調不良でお休みの間、永井氏がソロ活動していたこと、さらには中村氏が最近復帰し、先週4年振りのアルバムを発表したことを知りました。そして早速そのアルバム『やわらかい右手』を購入してきました。
ボーカルとギターとドラムスだけの編成ですが、4年というブランクを感じさせない見事な一体感と疾走感。短歌か俳句の世界の言葉選びにも似た、鮮やかでシャープなリリック。乾ききっていない傷口を引っ掻きたくなるような中毒性を持つメロディーライン。そして、シャウトというよりは雄叫びに近い全速力のボーカル。万人受けはしないだろうし、好き嫌いは大きく分かれそうだけれど、ボクを含むある種の音楽ファンには絶大な支持を受けるであろう、素晴らしい完成度です。
そして迎えたライブ当日。物販コーナーにいる時の永井氏の物腰の柔らかい好青年ぶりと、ステージ上のどこか焦点の歪んだ狂気の演奏のギャップにすっかりヤラれ、過去のアルバムやソロ作品なども買い占め、サインまでねだるミーハーっぷりで楽しんできました。
タテタカコ氏ご本人もステージ上で、『ヌルマユ』をもって「初めて聴いた時から好きになってしまい、しばらく追っかけをしていた」と告白するほど心酔されているようで、嫉妬よりも「さすが心の妻」と膝を叩く思いでした(意味不明)。エニウェイ、今年出会ったCDの中では、ボク的に文句なしでトップ3に入る傑作です。