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【無人島203日目】Sofia Pettersson 『Sometimes It Snows in April』 

投稿日:2010年4月27日 更新日:

203日目。ふと気付けば四月も末。今月はもう春だというのに、逆戻りの寒さの繰り返しで、東京では雪やみぞれの日もありました。『春の雪』というと、三島由紀夫の名作を思い出しますが、実際はあんな絢爛優美なものではなく、暖かいと信じきっていた季節に不意打ちで殴られたような、なかなかシビアにして身に凍みる衝撃でしたな。そうそう、稀代のソングライターの曲に、そんなことを歌った歌がありましたっけ。

長かった南北戦争のすぐあとトレーシーは死んだ。
僕が彼の最後の涙を拭いてやったその直後のことだった。
トレーシーは今頃あの世で楽しくやってることだろう。
この世に残された多くの愚か者たちよりもきっと。

僕はよくトレーシーを思って泣いた。
彼は僕のたった一人の友達だったんだ。
あんな素敵な車みたいな男はそうそういるもんじゃない。
僕は彼に会いたくて泣いたんだ。
でも人生はそう思い通りにはいかないものだ。

四月に雪が降ることもある。
嫌な気分になるときもある。
永遠に生きられたらと願うときもある。
でも幸運は長続きしないらしい。

一年で春が一番好きだった。
雨の中で恋人たちが手をつなぐ季節。
でも今ではトレーシーの涙を思い出させるだけ。
愛のために泣き、自分の痛みのためには泣かなかった男。

トレーシーはよく言っていた。
死ぬことは怖くない。
死んだらずっと夢見心地でいられるからと。
彼の写真を見つめていてわかったんだ。
あんな風に泣ける男は他にはいなかった。

四月に雪が降ることもある。
嫌な気分になるときもある。
永遠に生きられたらと願うときもある。
でも幸運は長続きしないらしい。

よく天国の夢を見る。
トレーシーはそこにいる。
彼はもう新しい友達を見つけただろうか。
四月に降る雪の理由を見つけただろうか。

僕はいつか、
トレーシーに会えるだろうか。

四月に雪が降ることもある。
嫌な気分になるときもある。
永遠に生きられたらと願うときもある。
でも幸運は長続きしないらしい。

幸運は長続きしない。
そして過ぎ去ってしまうまで、
愛は本物にはならないんだよ。

プリンス殿下が、86年にPrince And The Revolution名義で出したアルバム『Parade』に収録された『Sometimes it snows in April』という歌です。多くのアーティストにカバーされているので、ご存知の方も多いでしょう。今日は特にその中でもボクのお気に入りのジャズシンガー、Sofia Petterssonの02年のアルバム『Slow Down』に収録されたカバーバージョンをご紹介します。YouTubeなどでは見つけられなかったので、iTunesストアのリンクをつけておきますね。
http://itunes.apple.com/jp/album/slow-down/id280815506

いつもはキワキワな歌詞がお好みの殿下の、プライベートな手紙を垣間みるかのような「告白」チックな言葉使いと、ソフィアの舌足らずで、それでいて強く孤独の香りがするボーカルが、実にマッチしていてステキです。

歌詞は上っ面だけ読むと、愛する人を亡くした絶望と寂寥、幸せは決して長くは続かないという諸行無常的な孤独感を綿々と綴った、暗くて救いのない内容なのですが、なぜか暗鬱にならず、前向きな印象すら感じさせる不思議な歌です。それはたぶん「四月の雪」というものが、冷たくて厳しいながらも、美しく、もうすぐ来る春を約束してくれる暗示だからでしょう。過ぎ去ってしまうまで、愛は本物にはならない。同じように、長く寒い雪を耐え、春は本物になるのでしょう。

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