116日目。暑かった夏も、徐々に帰り支度を始め、空の色や風の匂いに、どこかしら秋の気配を感じます。今年の夏は結局休みも取らず、海にもいかず、フェスにもいかず、夏らしいことなーんもせんかったな。子供の時は1日1日を貪るように夏を摂取してたのに、これも年を取るということなのでしょうか。温暖化や環境の変化で、最近の日本は四季を感じられないなどというもっともらしい話に頷きながら、実は四季のうつろいに無頓着になり鈍感になっているのは、ボク自身なのかも知れません。いかん、いかん。夏っぽい音楽にでも浸っとけ、浸っとけ。
2000年に結成された4人組インスト・バンド「SAKEROCK」。「東京スカパラダイスオーケストラ」の元バンドマスターにして、最近は「ASA-CHANG&巡礼」として活躍しているパーカッショニストのASA-CHANGこと、朝倉弘一。以前紹介した「Hands Of Creation」のメンバーにして、多くのミュージシャンのアルバムに参加しているスティール・ギターの名手、高田漣。この3組、計6人が集まって作ったのが、この『トロピカル道中』というアルバムです。06年8月リリース。
「真夏のセンチメンタル・ジャーニー・バイブル」という意味不明なキャッチコピーのついたこのアルバムは、SAKEROCKのメンバーと高田蓮が「なんか一緒にやろうや〜」とダベッていたところに、たまたまASA-CHANGから電話が入り、「オレも混ぜてや〜」ってことで、6人で合宿を計画。メンバーそれぞれが持ち寄ったオリジナル曲を中心に、カバー曲も取り入れた全10曲を、たった3日間でレコーディングしたのだそう。
このCDは、実に「夏の匂い」のするアルバムです。いや「夏休みの匂い」と言った方が近いかな。気の置けない仲間たちと、夏のある日に楽器を持ち寄って、3泊4日の合宿に行く。どこにいくか、なにをつくるか、はとりあえずどうでもいい。だれといくか、がなにより大事。そういう、ワクワクした夏休みの記憶を、ギュッと音に閉じ込めると、こういう音楽になるんでしょう。
昭和歌謡的なメロディーラインに、南国情緒に溢れるアレンジ。常磐ハワイアンセンター的なウソっぽさが、なぜだかとてもご機嫌で心地いいのです。それは、もちろん彼らの卓越した演奏テクニックに起因するものでありますが、それ以上に「コイツらと遊んでっと楽しいさ〜」という極上のわくわくエッセンスがふんだんに振りかけられているからなのだと思います。特に細野晴臣のカバー「PomPom蒸気」の、ユルさ加減の上に立つ完成度は素晴らしい。バランスとセンスが奇跡的です。
海なんかいかなくても、フェスなんかいかなくても、このCDを聴いていると、いつでも心は真っ赤な太陽に照らされたようになるのです。まだ会社だけどね。チクショー、浸っとけ、浸っとけ。