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【無人島78日目】手嶌葵 “春の歌集”

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春の歌集

春の歌集

  • アーティスト: 手嶌葵, 樋口康雄
  • 出版社/メーカー: ヤマハミュージックコミュニケーションズ
  • 発売日: 2007/02/07
  • メディア: CD


78日目。ウチの近所の家の梅の木に、恥じらう少女の頬の色にも似た、小さな花が咲き始めました。まだ2月ですが、春はもうすぐそこまで来ています。温暖化だ花粉症だと危惧する声もありますが、咲く花に罪はないので、ちゃんと愛でてあげたいと思うのです。その梅の木の下で立ち止まり、すーっと息を吸うと、かすかに花の香りがして、なにやら心地のいい歌でも聴いているような気持ちになったり。それは例えば、この人の歌にも似た、なにやらオッチャンなボクの心に、懐かしい感慨を呼び覚ますような、甘くも切ない歌声に似ているのです。



手嶌葵。福岡県出身の19歳。ジブリ映画「ゲド戦記」の主題歌「テルーの唄」で、一躍注目を集めた女性シンガー。その清楚な佇まいと、真っ直ぐな歌声は、「心洗われる」という表現がドンピシャな雰囲気を醸し出す、希有な歌い手さんです。

今月2枚目のアルバムとなる「春の歌集」をリリース。谷山浩子の名曲「岸を離れる日」のカバーを含んだ、春をテーマにした全8曲。古風であり、不変でもある若き日の刹那な情景を切々を歌い上げています。

この人がオバチャンになって、それでも歌い続けている姿が、ボクには浮かびません。彼女は、たぶん今がピークでここが過ぎたらフツーな人になってしまいそうな気がします。でもだからこそ、今が貴重であり得ないほど美しい。そのはかなく今にも散りそうな姿は、まさに春そのものだと思うのです。


その日も川は流れてた

いつもと変わらぬ姿で

なせだかわけも知らず家を出て

わたしはひとり歩き出した

赤い靴をはいていた

初めてはいた赤い靴

夢から生まれた出た赤い火が

とまどう足をせきたてる

わたしをどこへ誘う

明け方の道

岸を離れ走る舟の

風がわたしの髪をみだし

心は燃えていた あなたへと

やみくもにただ あなたへと

(岸を離れる日)

-CD

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