86日目。東京は桜が満開です。普段は無骨で醜い身なりをした輩が、1年のうちたった10日だけ、誰をの目も奪うほど艶やかに咲き誇り、そして鮮やかに散り、また元の姿に戻る。それは例えばシンデレラや「アルジャーノンに花束を」のチャーリーが体験した、僅少だからこそ眩しく輝き得る時間の、華やかさと切なさを体現しているかのようです。
咲けば咲き散れば己と散る花のことわりにこそ身はなりにけれ(一遍上人)。
………。はあ? なに言っちゃってんの? このおっさん。 もう酔っちゃったの? うるせー! 桜ってのはなー! 人生なんだよ、人生! おい、酒がねえ! 酒よこせ! さっけーっ!
ネイト・ジェイムス。以前の無人島でも紹介しました。イギリス生まれのソウルシンガーで、昨年アルバム「Set The Tone」でデビュー。ソウル、ファンク、ディスコといったジャンルを絶妙にブレンドさせた前作は、日本だけでも5万枚を超える大ヒットに。「21世紀のスティービー・ワンダー」「男性版ジョス・ストーン」「ひとりジャミロクワイ」などという異名で書き立てられていましたが、その誰とも被らない確固たるオリジナリティを持った骨太な新星です。現在27歳。
先月リリースされたこのセカンド・アルバム「Kingdom Falls」は前作に比べるとずいぶんハイブリッドで実験的なサウンド。前作で特徴づけをしていたディスコ的な要素が希薄になり、AORな気だるさと落ち着きを持った作品になっています。正直、前作のノリノリを期待して買うとガッカリするし、クオリティ的にもボクは前作のほうが上だと思います。でも同じことをリピートしながら、劣化コピーを作り続ける余裕の無いアーティストよりも、前回の評価をなかったことにして、新しいことに挑戦しようとするその姿勢がボクは好き。下がシングルカットされた「Back To You」。かわいいアフロは健在です。
5月に来日ライブも決定。チケット取りました。前回のライブでは最前席の女子たちを軒並み骨抜きにさせるほどの、フェロモンむんむんライブでしたが、今回はどうなることやら。楽しみです。
一所に留まろうとすることの愚かさとみっともなさを、桜もネイトも教えてくれてるワケだよな。うん。わかるか? わかってんのか? 聞けって……。………。あ。おっさん、寝ちゃったよ。毎年の花見恒例だな、この体たらく。いいよ、ほっとけほっとけ。寝ている体に桜が散って、ちょうどいい具合、掛け布団になってるよ。