66日目。明けました。おめでたいです。年明けは大阪で迎え、朝までぐびぐび。元旦は実家に帰り、家族でぐびぐび。2日は友人宅に招かれ、手料理でぐびぐびと、新年明けてから、ずーっとぐびぐびしてます。ダメじゃん!これじゃあ、昨年のリピートじゃん!ダメダメ!今年はビシッと生きねば。そう、例えば背筋を伸ばし、竹光を携えた侍のように。弟子、入れては則ち孝、出ては則ち弟、謹みて信あり、汎く衆を愛して仁に親づき、行いて余力あらば、酒をぐびぐび。違う!
今年の一発目はこの本でいきましょう。昨年暮れに発刊された、 松本大洋の最新刊「竹光侍」の単行本。小学館「ビッグコミック・スピリッツ」で現在好評連載中のコミックの第1集です。
松本大洋は1967年生まれ。詩人の工藤直子を母に持ち、86年、18歳の時に「ストレート」でアフタヌーン四季賞準入選。その後通っていた和光大学を中退し、漫画家へ転身。90年にスピリッツ誌で「ZERO」の連載をスタートし、圧倒的な画力と映画的なコマ割り、そして研ぎすまされたストーリー展開で注目を集め、91年「花男」、93年「鉄コン筋クリート」、96年「ピンポン」と、新作が常に前作を上回るクオリティを持って発表される、天才漫画家です。
ボクは学生時代からこの人の漫画が大好きで、特に「ZERO」と「ピンポン」は、あまりにも繰り返し読んだため、単なる漫画というよりは、ボクの中のどっか一部分はこれらの松本ワールドで形成されてんじゃねえか?ってくらい大ファンです。5年という歳月をかけて05年に完結された大作「ナンバーファイブ」以降、待ちに待っていた新作がこの「竹光侍」。
今回は初の時代劇、かつ初の原作者アリの作品。江戸の長屋に流れついた謎の浪人・瀬能宗一郎とその隣人の息子・勘吉との出会いと交流、そしてなにやら血なまぐさい事件に巻き込まれそうなエピローグまでを結んだのがこの第1集。原作は和光大漫研の先輩で、松本大洋がたびたびインタビューで盟友として名前をあげている、漫画家兼僧侶・永福一成。
最近の雑誌のインタビューで松本大洋は「人に原作を任せているせいなのか、(竹光侍は)何年かぶりで描いているのが純粋に楽しい」と答えていましたが、本当に絵のタッチが近作になくのびのびとしていて、前作「ナンバーファイブ」で内側に深く向けられていたベクトルが、核まで届いた反動で表に戻り、つるりと表面の皮をむいたような、あっけらかんとした明るささえあります。懐にいれた爪を隠しながら、飄々と長屋の細道を抜け歩く宗一郎の痛快さは、そのまま松本大洋の今の心境なのかもしれません。
「ラクしたいわけでも、ラクが楽しいわけでもないんですよね。キツくて楽しいというか、楽しいとキツいこともできちゃう」。同じインタビュー記事で、松本大洋は自分の仕事ぶりについてそんな風に語っていましたが、曲がりなりにもモノを作る人間としては、実に身のひきしまる言葉ですな。大洋さんの爪のアカがほしい。それをつまみに、ぐびぐび。違う!