100日目。若い頃はいくら酒を飲んでも酔っ払わないので、周りの友達から有り難がられたり気の毒がられたりしていたのですが、ここ2〜3年ですっかりグダグダになってきて、最近は泥酔した上、いろいろやらかし feat. 翌朝ナニも覚えていない、という絵に描いたようなヨッパライ親父になりつつあります。仕事がカジュアルなので免れていますが、これでスーツだったら絶対に頭にネクタイ巻いているタイプだな、オレは。寿司折りぶらさげて千鳥足とかね。うーん。でもちょっといいかも、そういうのって楽しそう、って思っちゃう自分がなにより怖いです。
永沢光雄。96年にAV女優のインタビューを集めた本で脚光を集めたノンフィクション・ライターです。インタビューの名手と呼ばれ、著書も6冊ほど残しておりますが、昨年11月にアルコールによる肝機能障害のため亡くなりました。享年47歳。
無類の酒好き(つうかアル中)だったらしく、この死去されてから発刊された短編集『恋って苦しいんだよね』は、どれもこれも多分ご本人がモデルだと思われる「ヨッパライ」たちのグダグダなお話が26編ほど収められております。
著者のことは全く知識になく、友人から薦められるままに読んだのですが、この本はオモロイです。表現が鮮やかで、文章が美しい。どの話も、物事がニッチもサッチも行かなくなった男が、酒とセックスに逃げる、というかドップリ浸かってる生活の断片風景なのですが、ベタつかず陰気にならず、逆に無頼なすがすがしささえ覚える筆致。もう少し読んでみたかったと思わせるあたりで、バサッと幕を引く潔さも小気味良いです。
意識はずいぶんと前から戻っているのだが、瞼は開かず体も手足の指くらいしか動かない。だがそれがアルコールのせいだということは自明の理なので、病気か霊体験かなどと慌てることはなく静かに体を横たわらせる。そのうち、またひと眠りしてしまったようだ。目を覚ますと私は暗闇の中にいた。いつもなら隣室から襖の隙間を通して明かりが洩れ、時としてテレビを眺めている妻の笑い声が聞こえるのだが、今はそれがない。ただただ、真っ暗である。もしや自宅ではないのでは? 今度は体中の痺れが取れていたので私はベッドから起き上がった。四十肩の右手を痛みをこらえながら宙に遊ばせ、蛍光灯の紐を探り当てる。明かりが灯った。良かったのか、どうか、自分の部屋だった。(『黄金週間』書き出し)
酒を扱った小説という意味だけでなく、7日目に紹介した「失点・イン・ザ・パーク」の面白さにも似ています。文章的には町田康のリズムにも近いかな。自虐的でありながら、品があるというか。厭世的でありながら、愛情深いというか。分かりづらいか。ボク的にはかなりグッときました。
風邪のウィルスってのは日常の空気の中にあるから、風邪を引くのはウィルスのせいというより、自分の体調が弱ってるってことなんだよ、って話を聞いたことがありますが、酒で酔うってのもそれに似ていて、たくさん飲んでもしっかりしている時もあれば、ちょっと飲んだだけでグデングデンになったりもします。ネクタイ頭に巻いて、寿司折りぶらさげた千鳥足は、そうなるだけの理由を抱えているのかも知れません。なんだそれ? 言い訳。