5日目。先週まで雨続きだった東京は、今週いきなり初夏になりました。陽射しがナツいです。空気がなんかモワッとしていて、自分の体が微熱を発しているかのような錯覚に陥る。うーん。これは海だな。海でしょ。ね? 海だよね? って、もうひとりのボクと危ない脳内カンバセーションを交わしつつの、水曜日の会社。仕事は山積み。見ようによっては波の姿にも似た、白いモニターの連なるオフィスで、せめてこのアルバムでも聴きましょう。
松任谷由実 AKA ユーミンのニューアルバム「A Girl In Summer」。テーマはズバリ「海」だそうです。
ユーミンで「海」の歌っていうと、20歳にして発表した名曲「海を見ていた午後」とか、個人的にユーミンベストを作るとしたら絶対外せない「真冬のサーファー」とか、湘南ご当地ソングとして有名な「リフレインが叫んでる」とかが思い浮かびますが、今回の「海」は本人の解説曰く、「ひとりの自分に向き合うこと、ひとり自分と向き合ってみれば、自分の真実、飾らない気持ち、ひとりは孤独じゃないということに気づく」海だそうです。ふーん。ずいぶん内省的な海ですな。
この人の歌って、昔はものすごい歌詞が緻密で、聴いているとドバーッとその詞世界の映像が頭の中に浮かび上がるのが特徴だったんですけど、最近ちょっと変わってきたような。なんつうか、パッと絵が浮かばないっつうか、うまくトリップできんつうか。
って思ってたら、雑誌のインタビューで、最近の歌作りについて、「饒舌にならずに、聴き手に素材としての歌を提供したい」みたいなことを言っていました。つまり細かい筆でディテールまで描き込んだ厚い油絵のようなものじゃなくて、チャコールで軽くデッサンくらいのところで止めておいて、あとは聴き手の皆さんで色付けしてね、ってことらしいです。
大した才能もないやつにそんなこと言われたら「ナニ甘えたこと言っとんじゃ!ちゃんと最後まで描けや!」くらい思いますけど、相手がユーミンじゃね。素直に納得して、改めてこのアルバムを聴くと、確かにそんな感じ。「Forgiveness」なんて、まるで聖書の中の言葉みたいです。そこに何の意味合いを持たせるかは、確かにひとりひとり別のものなのかもしれません。聴き手もちゃんと「描く」覚悟で聴かないと、彼女の歌ではトリップできないってことですな。ハイ。がんばります。
今年の頭に亡くなられたお父上のために歌詞をリライトしたとされる「ついてゆくわ」には、ただ涙。そして感服。キーボードを叩く音が、さざ波のようにリフレインするオフィスで、海まで脳内トリップ。仕事は山積み。