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【無人島28日目】貫井徳郎 “愚行録”

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愚行録

愚行録

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2006/03/22
  • メディア: 単行本


28日目。最近なにかと話題の亀田親子。ボクシングの試合よりも、その後のドタバタのほうが話題沸騰っつう、おかしな状況になってますが、アレはどーなんすかね? いや、試合の判定が微妙だどーだってことよりも、ヒーローにもヒールにもなれる便利なキャラを、マスコミが好き放題オモチャにしてるように見えます。亀田親子を好きでも嫌いでもないけど、なんか今の状態は、大人数に苛められて熱くなってる子供みたいで少し可哀想かなと。



本年度の直木賞候補にもなった貫井徳郎の「愚行録」。郊外の一軒家に住む4人家族が一度に殺害された事件を軸に、その家族と交流のあった人々が語る証言から「家族の肖像」を浮き上がらせていく、という小説。

人から羨ましがられるような生活をおくっていた一家が惨殺されることで、証言者も「ひどい」「可哀想」といいつつも、どこかでその事件を楽しんでいるという、人間の醜い部分を強烈にフォーカスした小説で、正直胸クソ悪いです。

また1章ごとに挟まる、最後を読み切るまで誰が話しているのか分からない語りは、実の父親から強姦され、母親からは虐待を受け続けてきた女性が、タラタラとその不幸を連ねるモノローグで、もううんざりな気分でいっぱいです。

それでも最後までなぜか止められずに読んでしまうのは、著者の微に入り細に入る人間描写と、どこかでその人間の「醜部」を自分も確実に持っているんだと納得させられる挿話の巧みさからでしょうか。人間の愚かさを描いているこの作品は、「つまりアンタもね」と刃を向けてくるような、意地の悪さがあります。

「オレはそんな人間じゃない!」「あなたは私を勘違いしている!」なんて抗議しても、結局その人の目に映る自分はそういう人なんだし、ホントの自分というのは、結局いろんな人の目に映る像の集合体でしかない。

亀田親子も、今「オレたちはちゃうねん!」ってことをアピールしすぎて、ガンガン叩かれてるんだと思いますが、割り切って「好きに言えば?」的な態度を取ったら、またちょっと違う感じになるような気がします。例えば、おむつとおしゃぶりを向けられて、親子ともどもマジ切れするよりも、そそくさとそれらを身につけてから、「なんでやねん!」ってノリツッコミを返すくらいの余裕があると面白いかも。ま、結局最後は、ホンマモンの実力を見せることがなによりもですけどね。

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