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【無人島15日目】藤原正彦 “国家の品格”

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国家の品格

国家の品格

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 新書




15日目。昭和ヒトケタ生まれのウチの父母は、おかげさまで未だ健在。体にガタはきているものの、特に悪いところもなく、元気に暮らしております。現役時代はふたりとも教員をしておりまして、絵に描いたような堅ブツ夫婦。テレビはデフォルトNHK。たまの民放は「笑点」と「渡鬼」。新聞はボクが生まれる前から朝日。野球は巨人。お風呂は熱め。オヤジのタバコはセブンスター。ボクが海外に住んでた時代に、ふたりで初の海外旅行で遊びにきて、初日に「何食べたい?」って聞いたら、声揃えて「和食」って答えた典型的日本人コンサバ夫婦です。んで、先日実家に帰ったら、オヤジから「お前、コレ読め」と渡された本がコレ。後ろから母ちゃんも「そうね、あんたは読んだほうがいいわね」などと、意味深な援護射撃。どーゆー意味?



最近、本屋で平積みされているこの新書「国家の品格」。作者は作家であり数学者でもある、藤原雅彦氏。全然知りませんでしたが、作家・新田次郎と藤原ていの息子さんだそう。エッセイを中心として、著書も結構出してるんですね。

内容は簡単に言うと、世界大戦後、すっかりアメリカ化してしまった日本に、今一番必要なのは、経済改革とかグローバル化などではなく、日本人本来が持っていたはずの「情緒」とか「矜持」などといった「武士道精神」を取り戻すことにある!という考え方を、実にわかりやすく説いている本です。

例えば財力に任せて、メディアを買収するのは、なぜいけないのか? 答えは、それが「卑怯」な行為だから。法律うんぬんの前に、武士としてそれはやってはいけない。理屈ではなく、力あるものが弱者をいじめてはいけない。それが武士道だ。という話。

多分、賛否両論に分かれる内容だとは思いますが、ボクは結構好きでした。「バカの壁」もそうでしたが、なんとなくみんながぼんやりと思っていたことを、理路整然ときっぱり言い切ってもらう本って、単純に読んでて気持ちいいですよね。

ボクは欧米にしばらく住んでいたことがあって、アメリカやヨーロッパが持つ論理的で合理的な考え方ややり方も、それはそれで好きですが、どこかで馴染めない感じも確かにあって、それがどういう心理なのかよく分からなかったのですが、この本を読んで、ああなるほどね、って思いました。特に海外生活をしたことのある方にオススメの本かもしれません。

父ちゃん母ちゃんがボクにこの本を読めといったのは、多分いつまでも結婚もせずに、海外にフラフラ出て行ったりしている息子が、すっかり欧米文化にかぶれた似非アメリカ人になってるんじゃねえかと危惧してのことでしょう。いやいや、心配かけてます。でもあなたたちからもらったものは、ちゃんと今も持ってますよ。道は違ってしまったけれど、ボクは日本人。つか、あなたたちの息子です。心配すんな。

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