BOOK

【無人島66日目】松本大洋 “竹光侍”

投稿日:

竹光侍 1 (1)

竹光侍 1 (1)

  • 作者: 松本 大洋, 永福 一成
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: コミック


66日目。明けました。おめでたいです。年明けは大阪で迎え、朝までぐびぐび。元旦は実家に帰り、家族でぐびぐび。2日は友人宅に招かれ、手料理でぐびぐびと、新年明けてから、ずーっとぐびぐびしてます。ダメじゃん!これじゃあ、昨年のリピートじゃん!ダメダメ!今年はビシッと生きねば。そう、例えば背筋を伸ばし、竹光を携えた侍のように。弟子、入れては則ち孝、出ては則ち弟、謹みて信あり、汎く衆を愛して仁に親づき、行いて余力あらば、酒をぐびぐび。違う!



今年の一発目はこの本でいきましょう。昨年暮れに発刊された、 松本大洋の最新刊「竹光侍」の単行本。小学館「ビッグコミック・スピリッツ」で現在好評連載中のコミックの第1集です。

松本大洋は1967年生まれ。詩人の工藤直子を母に持ち、86年、18歳の時に「ストレート」でアフタヌーン四季賞準入選。その後通っていた和光大学を中退し、漫画家へ転身。90年にスピリッツ誌で「ZERO」の連載をスタートし、圧倒的な画力と映画的なコマ割り、そして研ぎすまされたストーリー展開で注目を集め、91年「花男」、93年「鉄コン筋クリート」、96年「ピンポン」と、新作が常に前作を上回るクオリティを持って発表される、天才漫画家です。

ボクは学生時代からこの人の漫画が大好きで、特に「ZERO」と「ピンポン」は、あまりにも繰り返し読んだため、単なる漫画というよりは、ボクの中のどっか一部分はこれらの松本ワールドで形成されてんじゃねえか?ってくらい大ファンです。5年という歳月をかけて05年に完結された大作「ナンバーファイブ」以降、待ちに待っていた新作がこの「竹光侍」。

今回は初の時代劇、かつ初の原作者アリの作品。江戸の長屋に流れついた謎の浪人・瀬能宗一郎とその隣人の息子・勘吉との出会いと交流、そしてなにやら血なまぐさい事件に巻き込まれそうなエピローグまでを結んだのがこの第1集。原作は和光大漫研の先輩で、松本大洋がたびたびインタビューで盟友として名前をあげている、漫画家兼僧侶・永福一成。

最近の雑誌のインタビューで松本大洋は「人に原作を任せているせいなのか、(竹光侍は)何年かぶりで描いているのが純粋に楽しい」と答えていましたが、本当に絵のタッチが近作になくのびのびとしていて、前作「ナンバーファイブ」で内側に深く向けられていたベクトルが、核まで届いた反動で表に戻り、つるりと表面の皮をむいたような、あっけらかんとした明るささえあります。懐にいれた爪を隠しながら、飄々と長屋の細道を抜け歩く宗一郎の痛快さは、そのまま松本大洋の今の心境なのかもしれません。

「ラクしたいわけでも、ラクが楽しいわけでもないんですよね。キツくて楽しいというか、楽しいとキツいこともできちゃう」。同じインタビュー記事で、松本大洋は自分の仕事ぶりについてそんな風に語っていましたが、曲がりなりにもモノを作る人間としては、実に身のひきしまる言葉ですな。大洋さんの爪のアカがほしい。それをつまみに、ぐびぐび。違う!

-BOOK

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

no image

【無人島68日目】宮部みゆき “名もなき毒”

名もなき毒 作者: 宮部 みゆき 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2006/08 メディア: 単行本 68日目。有給くっつけて10連休にしていた正月休みも、ぐびぐび呑んでいるうちに気づいたらあと …

no image

【以前の無人島2日目】枡野浩一「淋しいのはお前だけじゃな」

淋しいのはお前だけじゃな 作者: 枡野 浩一 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2003/12/01 メディア: 単行本 さて、干したてのフカフカの布団みたいな無人島の砂浜で、ゴロゴロしながら本で …

【無人島302日目】幡野広志 『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』

ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。 ボクはいい歳してチョンガーの一人暮らしなので、もしも何かのはずみでコロッと逝ってしまっても、直接的に(経済的とか生活的とかいう意味で)迷惑を掛けてしまう相手は …

no image

【無人島104日目】若杉公徳 “デトロイト・メタル・シティ”

デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス) 作者: 若杉 公徳 出版社/メーカー: 白泉社 発売日: 2006/05/29 メディア: コミック 104日目。得てして、その人が作る …

no image

【無人島84日目】小川洋子 “ミーナの行進”

ミーナの行進 作者: 小川 洋子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2006/04/22 メディア: 単行本 84日目。ボクは子供のころ「鍵っ子」でした。学校が終わって家に戻ると、両親は共稼 …