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【無人島210日目】David Gray 『Foundling』

投稿日:2010年10月21日 更新日:

210日目。年を取ったせいなのか、はたまた元々の造りが良くないのか、最近頓に物忘れが激しいのです。特に陽気に呑み明かした次の日などは、なにやら楽しかった気分だけは胸いっぱいに残っているのに、何が楽しかったのかはキレイさっぱり忘れている、というようなことがしばしば。中島みゆきさんの歌に『年を取るのはステキなことです。そうじゃないですか? 悲しい記憶の数ばかり、飽和の量より増えたなら、忘れるよりほかないないじゃありませんか?』という一節がありましたが、その説で言うならボクは、大した容量もない脳みそに、余計なガラクタばかり詰め込んで、楽しい記憶も悲しい記憶もボロボロと取りこぼしているような気がします。

63日目にも135日目にも紹介したボクの敬愛する英国のSSW、デヴィッド・グレイが、今年8月に9枚目のスタジオアルバム『Foundling』をリリースしました。タイトルは『みなしご』とでも訳すのでしょうか、本人曰く「とてもプライベートな作品」とのこと。98年に大ヒットをかまし、一躍スターダムに躍り出るきっかけとなった名盤『White Ladder』で描いたような、ストレートで能動的な印象は影を潜め、息を詰めて水の中に深く潜り込んだ時のような、孤独と内省を描いた楽曲が目立ちます。

その中でも、特にボクのお気に入りは「忘却」をテーマにしたこの曲。その名も『Forgetting』。

はいつくばり、歩き出し走りはじめ、汗をかき、
忘れる。

嘘をつき、欺いて、手を貸して、けしかけて、
忘れる。

うずいて、引っ掻いて、殴って、打ち据えて、
忘れる。

思い出し、回想し、消し去って、後悔し、
忘れる。

目覚めたときの君の笑顔も、結婚式での君の涙も、
忘れる。

うかれている間に地獄に向かい、大きな網に捕らえられ、
忘れる。

一拭きでピカピカに、一瞬でアルマゲドンに、
忘れる。

日本語にするとよく分からんのですが、関連性のある動名詞とその韻を、まるでピアノの旋律と合わせるかのように、美しく紡いでいるのがとても印象的です。歌詞というより詩、詩というよりも短歌などに近い、引き算の美学を感じさせます。

忘れたくないのに忘れてしまったこと、忘れようとして忘れられたこと、実はどちらも大した違いはないのかもしれません。なぜならボクらはいつか最後に、なにもかもを忘れ、なにもかもから忘れ去られてしまうのですから。Forgetting is Forgiving.

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