33日目。週末、長野県の下諏訪まで「唄の市」というライブイベントを観に行ってきました。元「古井戸」の加奈崎芳太郎が企画しているイベントで、今年の参加ミュージシャンは、野狐禅、サンタラ、タテタカコという、まるでボクの趣味を知ってて集められたようなメンバー。野狐禅やサンタラは、もう何度もライブを観てるんですが、タテタカコだけは今回が初見。しかもこの人、「ライブがスゲー」ってもっぱらの評判なんすよね。こりゃ楽しみだ。ドキドキ。
タテタカコ。長野県飯田市在住の28歳。地元でアルバイトしながら、路上ライブなどで活動していた彼女の曲が、一昨年カンヌで最優秀男優賞を獲得した映画「誰も知らない」の挿入歌として使われ、話題になりました。2004年にメジャーデビューし、現在3枚のミニアルバムをリリースしています。
今回のイベントでは、加奈崎氏のあとに2番手で登場。加奈崎氏のアバンギャルドな演奏のあとにひっそりと舞台に現れた彼女は、90度近い深々としたお辞儀のあとにピアノの前に座り、鍵盤に指を置いたまま目をつむり黙祷。「寝たのか?」と思わせる静寂のあと、いきなりクワッと目を見開き、唐突に歌が始まりました。
真夜中の空に問いかけてみても ただ星が輝くだけ
心から溶けだした黒い湖へと 流されていくだけ
(宝石)
真夜中の底のように、どっぷりとした絶望の歌を、まっすぐに背筋を伸ばして、客席よりもずっと遠いところを見つめながら歌う姿は、ちょっと狂気さえ匂わせる真剣さで、観客を釘付けにします。
ボーイソプラノを喚起させる、ビブラートのないストレートな歌声。絶対音感を持っているのかと思わせる音階の精確さ。ほとんど指先を見ていないのに、まるでミスタッチのないピアノプレイ。演奏の合間に入る、なんだかやたら可笑しいMC。ある意味パーフェクトなライブでした。なるほど、スゲーや。
ライブが終わり、会場出口付近のCD販売コーナーでタテタカコ氏本人が立っていて、購入者のCDにサインを入れてくれていたので、ボクもこのCDを買ってきました。サインだけじゃつまらんので、「好きな言葉も添えてや」と図々しくお願いしたら、ほとんど悩まずに「じゃあ、私がいつも自分に言い聞かせてる言葉を」と言いながら、書いてくれた言葉が「自分次第」。
こんな細くて華奢で、傷ついた歌ばかり歌っている女の子が、いつも自分に「自分次第、自分次第」と言い聞かせてるのかと思ったら、なんだか頭をなでてあげたくなった。きっとこの人の歌に出てくる絶望や諦めは、そこから歩き始める自分のために吐き出している毒なんでしょうな。
昨日今日と、このアルバムに入っている「心細い時にうたう歌」にハマリ中。聴いてると痛いので癒されないけど、かすかに「再生」の匂いのする名曲です。心細いのか、オレ? いや、自分次第。オレ次第。