さて、初日です。ひさびさの無人島。大きく深呼吸。スーッ、ハーーーッ。そのまま後ろにバタン倒れると、フカフカの白砂が真綿の布団のようにボクの体を受け止めてくれます。目を開けると、頭上高くヤシの木の葉が「おかえりー」と手を振ってくれています。ただいま、ボクのパラダイス。こんな気持ちのいい日に聴くのは、このCD。
このアルバムはジャケ買いでした。きれいな田園風景に、ポッカリ浮かぶ赤い風船。よく見ると、この風船、シールなんです。中を開くと一転して夜の都会のイラストになりますが、ここにも風船が。凝ってるし超キレイ。もう音楽がクソミソでもいいや。このジャケットが欲しい。そう思って買ったんです。
んで家帰って、CDを聴いてびっくり。傑作でした。2002年にリリースされた、イギリスのユニット「Lemon Jelly」の2枚目のアルバム。明朗でさわやかなリフレイン。スケールの大きなサウンド・デザイン。陰気な要素など微塵もない、全曲がピカピカと光って聴こえます。バカっぽい感想ですが「チョー気持ちぃー」。それ以上ピッタリくる言葉は見つかりません。
レモン・ジェリーは、ニック・フラングリンとフレッド・ディーキンの2人組。ニックはビョークやブラーなどのアルバムにも参加しているプログラマーで、フレッドはDJ兼クラブ・オーナー兼デザイナー兼庭師という、ワケ分からん肩書きの人。ボクが一目惚れしたこのアルバム・ジャケットも、フレッドさんの作品だそう。
全曲大好きですが、なかでも童謡をベースにしたカントリー・ファンクな「Nice Weather For Ducks」や、宇宙飛行士のナレーションがやたらおかしい「Space Walk」あたりで、ボクの頭は脳内分泌液でグチョグチョに濡れました。
例えば、子供が自分の設定したおままごとの世界に、我を忘れてドップリ浸かれるあの真剣さで、溢れるセンスと才能を持つ大人が、自分で作り出したパラダイスで遊ぶと、こんな世界が創れるのかと思います。それはボクの無人島にも似ていますが、もっと高度で研ぎすまされた島なんでしょうな。そんな人たちの音楽を聴きながら、ボクはこの無人島でのんびり過ごす。いいの、ボクはそれで。