CD

【無人島133日目】青柳拓次 『たであい』

投稿日:2007年11月19日 更新日:

133日目。最近すごく気になっているCMが、ヱビス・ザ・ホップ。ヱビスビールのテーマソングである♪タララリラ〜ン〜タラリラ〜ンという「第三の男」のメロディーを、公園のベンチでいろんなミュージシャンがセッションしているアレです。なんとも渋い人選かつおもろい顔合わせで、15秒という短い時間ではもったいないくらい、ドキドキするCMですな。記憶にあるだけでも、ゴンチチや高田蓮、曽我部恵一とASA-CHANG、はたまた小山田圭吾とヤン富田らが、一緒に♪タララリラ〜ンってやっておりました。なんともユルい感じで気持ちが良さそうだし、制作側の音楽とビールに対する愛情が伝わるステキなCMだと思います。

今年の夏、そのヱビス・ザ・ホップのCMで、白砂のビーチの上に置かれたベンチの上で、畠山美由紀と♪タララリラ〜ン〜をしていたのが、青柳拓次 from リトル・クリーチャーズ。「いかすバンド天国」でイカ天キングになってデビューしたのが、1990年。今でこそ珍しくありませんが、当時日本人のバンドで全曲英語詞ってのはかなり珍しかったし、しかもモノすごくチャーミングなアコースティック・サウンドで、大学生だったボクは、ボクよりも年下の青年がこのサウンドを作っとるのかと、愕然としたものでございます。

その後、青柳は海外留学などを経て、93年ごろから無国籍音楽団「ダブルフェイマス」のメンバーとしても活躍しつつ、KAMA AINA名義でソロ活動も開始。最近では「BOOKWARM」というポエトリーリーディングのイベントを開催したり、自分のレーベルを設立したりと、地味ではありますがなかなかどうしておもろい活動を着々と進めておるのです。

そして今月、初の「青柳拓次」名義で出したソロ・アルバムがこの「たであい」。今まで英語詞をメインとしてきた彼が、琴や笙や木魚、はたまた二胡や馬頭琴と言った古風な楽器を多用して、「日本」をテーマに制作した作品です。もちろん歌詞はすべて日本語で、最初に聴いたときは小野リサがうたう日本語の歌くらいの違和感がありましたが、そんなこともすぐに気にならなくなるくらい、「雰囲気」のあるアルバムです。

これ以上は削ぎ落とせないくらいに削ぎ落とした詞世界は、「日本」にこだわりながらも、どこか見知らぬ国の風景にも似た、疎外感と寂寥感のようなものを含んでいます。それは、故郷を持たない人がうたう望郷の歌のように、つまり「憧れ」のように、ボクには聴こえます。

南へ歩けば
北にぬける

左へ走れば
右につづく

女にふれれば
男にであう

言葉にかくれた
しずけさを聴く

帰ろう我が家へ
藍色こえて

「例えば、アメリカにはブルースというものがあって、ブラジルにはサウダージという言葉がある。じゃあ、自分が感じる、この何とも言えない気持ちというのをなんと表そうかと思ったときに、藍色という言葉に託そうと思った」とは、青柳の言葉。演歌でもJ-POPでもない、日本人としてのルーツ・ミュージック。それはきっと、人それぞれ別のモノであるのかも知れませんが、とにかく青柳が見つけた答えが、音ではなく「藍」という色であるところが、実にこの人らしいと思います。

デビューから17年。決して短くない時間を音楽に費やしてきた男が、とりあえずいま辿り着いた色であり音だとして聴くと、なんともステキな人生を歩いているじゃねえかと、多少うらやましくなってしまうようなアルバムです。なんとなく、ビールが飲みたくなってきました。♪タララリラ〜ン〜タラリラ〜ン。

-CD
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

【無人島286日目】Joe Henry 『Civilians』

Civilians 286日目。週末、さいたまスーパーアリーナで「マドンナ」さんのコンサートを拝見させていただきました。1982年に『Burning Up』で世の男性のド肝をはじめとしたあらゆるモノを …

【無人島263日目】上田知華+KARYOBIN 『線』

上田知華+KARYOBIN 263日目。先日、友人に誘われて「似顔絵教室」とやらに参加してきました。人の顔の特徴の捉え方と、それを描くときのコツを教えてもらいながら、実際に鉛筆で似顔絵を描いていくとい …

【無人島292日目】宇多田ヒカル 『道』

Fantôme 292日目。先週、稀代の天才・宇多田ヒカルちゃんが6枚目のアルバム『Fantôme』をドロップされました。前作『Heart Station』から約8年。年齢で言えば25歳から33歳まで …

【無人島261日目】小泉今日子 『Koizumi Chansonnier』

Koizumi Chansonnier(通常盤) 261日目。どちらかというと、というか、相当テレビに疎いボクは、昨年大流行した『半沢直樹』も『あまちゃん』も、一度も見たことがございませんでした。ちょ …

no image

【無人島116日目】サケロックオールスターズ “トロピカル道中”

トロピカル道中 アーティスト: サケロックオールスターズ 出版社/メーカー: CHORDIARY 発売日: 2006/08/09 メディア: CD 116日目。暑かった夏も、徐々に帰り支度を始め、空の …