134日目。本日発売の「ミシュランガイド」東京版が、全国の書店で売り切れ続出だそうです。フランスのタイヤ屋さんがなんで料理評本を出しとんの? んで、なにゆえそんなに重宝がられるのん? モノ知らずなボクには全くもってピンとこないワケですが、それ以上に、星3つの評価をとったといわれる東京の名店8軒を、いずれも行ったことないどころか、見たことも聞いたこともない自分がどうかと思う。どうよ?オレ。38歳。……おい! ミシュラン! 高い店ばっか行ってんじゃねえぞ、オラ! 大戸屋はどうした! 吉野屋が載ってねーぞ!! て、「ミシュランガイド」に逆ギレ。意味不明。あーあ。腹を立てたら腹が減った。帰りに定食屋にでも寄ろうかな。
南風に追われたら
北の果て目指すのは定食屋
花の無い崖に立ったら
騒がしく呼ぶような君の声
海ねこだ
話しかけてきた男は
写真に撮られるのが嫌い
駐車場で夢は枯れた
約束の時間はもう過ぎた
たどり着いた定食屋
波の音とロシアの土産
うには踊る
輝くいくら
テーブルの前の君を待つ
大きな窓には
ただ空だけが笑ってた
ただ海ねこが鳴いていた
君が来たら食べ始めよう
荒涼と凍えた冬の海。崖から続く、花も咲かない1本道を行くと、ポツンとある定食屋。駐車場には人影もなく、白く曇った窓ガラスを、海ねこの鳴き声が叩いている。薄い木戸を開けて店内に入ると、愛想のない店主と、薄気味悪い先客がひとり。白木の椅子に座り、土地のものを適当に注文をする。出てきたのは、プリプリのうにと、ピカピカのいくら。思わず生唾を飲んで見つめていると、テーブルの向かいに誰かが座った。目を上げると、君がいた気配だけがした。
そんな感じの風景でしょうか。キセルっていうバンドの「海ねこと定食屋」という歌です。キセルは、01年のデビューした京都出身の兄弟バンド。ボクは彼らの音楽が大好きで、ライブにもよく足を運んでいるので、もうこのブログでもすっかり紹介したつもりになってましたが、よく考えたらまだでしたね。
彼らの特徴は、アコギ×リズムボックス+MTR+サンプラー×ファルセットボイスという、独特な方程式で作られるフワフワ・ファンタジック・ミュージック。どこか懐かしいような、夢の中のような、可愛いような、恐ろしいような、なんとも筆舌に尽くし難い音楽を奏でております。そしてなによりも驚くのは、こんなに複雑な音楽をたったふたりで演奏しているところと、ライブでも完全にその世界観を再現できる演奏力でしょうか。正直ボクは彼らにベタ惚れです。
05年には、キセルファンを公言する著名人たちのセレクトによるベスト盤「タワー」をリリース。そのセレクターに名前を連ねたのが、村上隆、YUKI、細野晴臣、佐野史郎などなど、実にクセのありそうな面々でワクワクします。ちなみに前述の「海ねこと定食屋」も、しりあがり寿によるセレクトで収録されております。来年1月には5枚目のアルバムのリリースも決まっております。
いや、正直もちろん「ミシュランガイド」に載ってるレストランにも行ってみたい!「ああ、あそこね。何回か行ったけど、それほどでもなかったよ?」とかシタリ顔で語ってみたい! でもそれよりももっともっと行ってみたいのは、この「海ねこと定食屋」の定食屋のほうです。さすがにここまでは、ミシュランの調査員も辿り着けないでしょう。オレがつける、星3つ。
[…] 134日目にも紹介した兄弟バンド「キセル」の2008年のアルバム『magic hour』に収録された『君の犬』という歌です。ドリミーなアレンジの多いキセルには珍しく、高田渡にも通じる王道なフォークミュージックで、元恋人の犬の死をきっかけに悟る『終焉』を歌った佳曲です。 […]