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【無人島104日目】若杉公徳 “デトロイト・メタル・シティ”

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デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス)

デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス)

  • 作者: 若杉 公徳
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2006/05/29
  • メディア: コミック

104日目。得てして、その人が作る作品と、その人の「人となり」とは、全く別モノであることがあります。例えば、モノすごく簡潔かつ道徳的な文章を書く人にお会いできる機会があって、どんな人だろうとドキドキしてたら、すんごい話の長い世捨て人なおっちゃん(←失礼)だったことがあります。あと「あ、私、え、絵とか描くんです……」なんてモジモジしてる子の絵を見せてもらったら、岡本太郎バリに爆発していたこともあります。もちろんその人の中に、道徳的な部分や爆発的な要素が秘められているからこそ、作品にアウトプットされるんだとは思いますが、「あんた、全然キャラ違くね!?」って場合は意外と多いです。身近な例でいうと、普段はすごく無口なのに、メールだと絵文字使ってやたら饒舌、みたいな人って、周りにいません? 

って、なんの話かっていうと、現在ヤングアニマルで連載中のマンガ「デトロイト・メタル・シティ」の話。05年にスタートしたこの作品は、ネットの口コミで人気を集め、コミックス1巻が発売されるやいなや、アマゾンの全書籍売上ランキングで第1位を獲得。現在は3巻まで出ていますが、いまだに勢い衰えずカルト的人気を誇っています。作者は本作で脚光を浴びた新星・若杉公徳氏。

ストーリーは、スウェディッシュ・ポップスが好きな、お洒落で温和なチェリーボーイ・根岸崇一が、食っていくためにインディーズ・レーベルと契約し、デスメタル・バンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のフロントマン「クラウザーII世」として人気を博し大活躍してしまう、というギャグマンガ。

正直、ギャグのネタがすごく下品で、下ネタや不謹慎なワードがバンバン出てくるので、あまり万人(特にキッズ)にはオススメしません。でもこのマンガはおもろいです。普段は「カヒミ・カリィ」の音楽を好み、本当はオシャレ・ポップス路線に行きたいのに、自分のやりたい音楽では全く評価されず、DMCでその鬱憤を吐き出せば吐き出すほど、デスメタル・プレイヤーとして爆発的なカリスマ人気を獲得していくという主人公の苦悩は、滑稽ながらもどこか哀切を感じさせます。デスメタル・ファンとお洒落ポップス・ファンを、両方とも同じ愛情をもってコキおろしているところもバランスがいい。

普段の対人関係もひとつの表現の場だと考えれば、得手不得手があるのは当然で、苦手な人がその人自身を、普段の自分として上手に表現できないのも不思議ではないかもしれません。自分が「本当の自分」と思っている自分と、周りから「こういう人だよね」と思われている自分との、ギャップが大きければ大きいほど、人生はややこしい。そして、そう思ってる人は意外と多い。そこが、このマンガの人気の理由かも知れません。かくゆうボクもこのブログのキャラとは、普段は全く違うんですのよ。「オレは地獄のテロリスト! ファーック!」

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