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【無人島205日目】Peter Gabriel 『The Book of Love』

投稿日:2010年5月21日 更新日:

205日目。先日、友人の結婚式に参列してきました。二次会では新郎新婦からのリクエストで、会場で流す音楽の選曲もさせていただきました。結婚式の音楽っつーのは、なかなか難しいですな。歯の浮くようなベタな曲もどうかと思うし、かといって誰も知らないマイナーな選曲でも盛り上がらない。英語の曲だと、メロディーはいいんだが、歌詞の内容が縁起でもなかったりするので、ちゃんと調べんといかん。もちろん新郎新婦の好みだってある。そんなことを考え始めると、みんなが喜ぶように選曲するってのは、なかなかどうして至難の業なのでございます。

例えば有名どころで言うと、73年にドリー・パートンが発表し、92年にホイットニー・ヒューストンが大ヒットさせた『I Will Always Love You』。タイトルの分かりやすさと、サビの「えんだ~!」の盛り上がりで、結婚式にはよく使われる曲ですが、歌詞はどう転んでもお別れの歌。「あなたには私が必要じゃない。さようなら。お元気で。えんだ〜!」っつう、幸せにはほど遠い感じの内容です。

あと、讃美歌でありポップスとしても人気の『Amazing Grace』。一見問題なさそうなこの歌は、実は作詞をした牧師さんが過去に奴隷売買をしていて、その時の自分の罪を懺悔した歌なのだそう。「That saved a wretch like me(私みたいな愚か者を救ってくれた)」とは黒人を拉致し奴隷として売りさばいていた自分自身のこと。結婚式で流すにはあまり適切ではないようで、アメリカの熱心なクリスチャンの中には、眉をひそめる方もいらっしゃるそうです。

まあそんなチマチマしたところまで考え始めたら、極彩色の昆虫にサンバでお祝いされる『てんとう虫のサンバ』の危険な幻覚はドラッグの匂いがプンプンするし、吉田拓郎の「ボクの髪が肩まで伸びて、キミと同じになったら〜」は、まともな職に就いていないロン毛男の、計画性の微塵もないプロポーズにも聞こえるので、かける曲なんてなくなっちまうぜ!って話なのですが。

そういう視点で改めて自分のCDラインナップを漁ったところ、ボク的に一番結婚式にピッタリくるなーと思ったのはこんな曲でした。

長くてつまらない「愛の本」。
あんな本、誰も読まないよ。
表やら理論やら図なんかでいっぱいで、
ダンスの仕方なんて章もある。

でもね。
あなたがその本を読んでくれるのは大好きです。
あなたが読んでくれるならなんだってうれしいです。

音楽付きの「愛の本」。
そもそも音楽は「愛の本」から生まれたんだって。
中には、漠然としすぎてたり、
全然良くない歌もたくさん入ってるんだけどね。

でもね。
あなたがその歌を歌ってくれるのは大好きです。
あなたが歌ってくれるならなんだってうれしいです。

長くてつまらない「愛の本」。
ずっと遠い昔に書かれた本。
花やハート型の箱なんかが詰まっていて、
若い人には理解できないようなモノもある。

でもね。
そんなものでもあなたがくれたらうれしいです。
それが結婚指輪だったら、もっとうれしいです。

もともとは「The Magnetic Fields」というバンドが99年にリリースした『69 Love Songs』というアルバムに収録された曲を、04年にピーター・ガブリエルがカバー。ハリウッドでリメイクされた映画『Shall We Dance?』の挿入歌にもなっていました。アルバムとしては昨年ピーター・ガブリエルが発表したカバーアルバム『Scratch My Back』に収録されています。

「愛とかってよくわかんないけど、あなたがそういうなら信じるよ」というシンプルなメッセージが、「無垢」と「決心」を感じさせる名曲です。ピーター・ガブリエルの朴訥としたボーカルもいいですな。花嫁が背筋を真っ直ぐに伸ばして、一歩ずつバージンロードを歩く時にこの曲が流れたら、きっとピッタリなのではないかと思ったのです。

じゃあこの曲を二次会で使ったのかと言えば、なんとなくしんみりし過ぎちゃうような気がして結局やめ、散々悩んだあげく、チャゲ&飛鳥のオンパレードになりました。なんでやねん。わたる&あやちゃん、おめでとうでした! 迷わーずにーセイエース!

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