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【無人島187日目】松任谷由実 “経る時”

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REINCARNATION

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  • アーティスト: 松任谷由実,松任谷正隆
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD

187日目。もう桜も終わり、新緑が眩しい季節になりました。今年の花見では、超二日酔いのヘロヘロ状態で宴に参戦したせいで、マッタリとみせかけて実はグッタリ、浮かれる悪友たちを傍目にひとり大人しく桜を眺めておりました。ピンク色のモコモコとした綿菓子みたいな桜の花は、足下で繰り広げられる酒池肉林などまるで目に入らぬかのように、ただぼんやりと風に吹かれております。意外と桜は、目立つことの苦手な物静かなタイプなのかも知れません。年に一度、ほんの数週間だけ、否が応でも花をつけてしまう我が身のはしたなさに、実は頬を染めているだけなのかも知れません。

桜は『サクラサク』などの電報文に代表されるように、めでたいことの代名詞でもある反面、死や別離にまつわる作品にも多く登場する花でもあります。『願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ』と詠んだのは西行法師。もちろんこの「花」とは桜のことで、実際に西行は桜の季節に入寂されたのだとか。梶井基次郎の『桜の樹の下には』という短編小説は、主人公が桜の根元に人の屍が埋まっていると妄想するお話で、「でないとあの美しさの説明がつかない」と主張します。
なんとなく、あの美しきものを一枚ずつひらりはらりと我が身から剥がしていく姿が、時の流れや老い、もしくは無常といったものを連想させるのでしょう。桜を見ていると、なんだか自分がひどく年取ったような錯覚に陥ったりします。そうそう、確かそんなことをかつて、稀代のシンガー・ソングライターが歌っておりましたな。
窓際では老夫婦が、
膨らみだした蕾を眺めている。
薄日の射す枯木立が、
桜並木であるのを誰もが忘れていても、
何も言わずやがて花は咲き誇り、
叶わぬ想いを散らし季節は行く。
二度と来ない人のことを、
ずっと待ってる気がするティールーム。
水路に散る桜を見に、
寂れたこのホテルまで。
どこから来てどこへ行くの?
あんなに強く愛した気持ちも憎んだことも、
今は昔。
四月ごとに同じ席は、
薄紅の砂時計の底になる。
空から降る時が見える。
寂れたこのホテルから。
『四月ごとに同じ席は、薄紅の砂時計の底になる』。そんじょそこらの才能では描けない、素晴らしい一節ですな。桜は降り、時は経る。ぼんやりとその姿を眺めているうちに、いつの間にか年老いてしまった自分に気付く。今年の桜ももう終わりました。ボクはあと何回花見ができるのでしょう。

-CD

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