253日目。以前ある仕事で、ハワイに住む日本人女性にインタビューをさせてもらったことがあります。日本にいるときからスキューバダイビングが好きだった彼女は、趣味が高じて会社を退職、ハワイはハワイでも、ホノルルのあるオアフ島ではなく、まだ火山活動も活発なハワイ島に移住し、現地でダイビングのインストラクターとして活躍されておりました。インタビューの中で「どうしてハワイ島だったんですか?」というボクの質問に、彼女は少し考えたあと、こんな風に答えてくれました。
「自分の足にピッタリあう靴を見つけた感じなんです。一度履いたらあまりの心地よさに、もう他の靴は履けなくなっちゃったし、今では脱ぐことすらできなくなってしまった。私にとってこの島はそんな感じです」。
もう10年以上も前の話ですが、ボクは今でも「住むべき場所」について考えるとき、この言葉を思い出します。
先週末、有休をくっつけて宮古島に行ってまいりました。目的は今年で9回目を迎える『美ぎ島(かぎすま)ミュージックコンベンション』。4年前に解散した我が心の「野狐禅」の復活ライブに感涙し、古謝美佐子と夏川りみの世代を超えたデュエットに酔い、一場春夢の3日間を過ごしてきました。
そのライブ会場で、宮古島でイタリアン・レストランを経営されているというシェフとお会いしました。京都出身のそのシェフは、本場イタリアで修行を積んだあと、地元の京都でも東京でもなく、ここ宮古島でお店を開いたのだそう。宮古島の食材の面白さを生き生きと語り、すれ違う地元の人から気さくに声を掛けられている彼をみて、「どうして宮古島に?」という質問も必要ないくらい、ああ、この人も自分にピッタリの靴を見つけた人なんだな、とボクは思いました。ステージでは山崎まさよしの伴奏で、元ちとせが『ひかる・かいがら』を歌っていました。
旅立つ人よ 行方は聞かない
そっと潮風に ゆだねます
砂に埋めた 願いのかけらを
たったひとつだけ 手のひらに
ひかるかいがらを あなたにあげよう
サヨナラを 口にする代わりに
ひかるかいがらを あなたにあげよう
この海の色 おもいだせるように
生涯の伴侶や、天職として仕事を見つけるのと同じくらい「住むべき場所」に出会うのは難しいことでしょう。数多の国、数多の街の中から、自分だけの場所を見つける。もう見知らぬ国に憧れることも、遠い場所に惹かれることもなく、安らかに暮らせる約束の地。ハワイ島の彼女や宮古島のシェフが見つけた「自分の足にピッタリの靴」を探しに、ボクはまだ旅を続けなければなりません。