194日目。ふと気付くと、10月。夏にサヨナラを告げる間もなく、秋はいつの間にかそこに居ました。1ヶ月以上もブログを放置したまま、なにをしておったのかと言うと、これがまた大したことはなにもしていないというテイタラク。仕事の忙しさにかまけて、季節の移り変わりも、読書の醍醐味も、音楽を噛み締めて聴くことも忘れてしまうのは、なんというか、人生の本質的な本末転倒を覚えますな。今夜半に我が街にも訪れるタイフーンを待ちわびるかのような冷たい雨をオフィスの窓越しに見つめながら、そんな物思いに耽るひととき。働け。ヤキイモが食いたいな。働けって。
まずは空耳アワーのようなこの歌をお聴き下さい。
ハワイ出身・カリフォルニア在住の女性シンガー・ソングライター、Simone Whiteさんの今年7月に出た3枚目のアルバムのタイトル曲です。彼女が07年にツアーで来日した際に、静岡の下田で聴いた「礼拝の呼びかけのような奇妙な歌(本人談)」が忘れられず、その後鎌倉で同じ歌に遭遇した際に、その声の主を捜すために鎌倉中を駆け回り、やっと見つけたのが軽トラから流れる「焼き芋ソング」だったとのこと。その「謎めいて」いて「郷愁を覚える」メロディーを題材にして、書き上げたのがこの歌だそう。
確かにそう言われれば、なんとも奇妙な節だし、どこの街にいっても基本フレーズは一緒だし、誰が作ったのかは知らないけれど、誰もがみんな知っている歌でありますな。夜鳴きのチャルメラや、豆腐屋のラッパと並び、昭和の日本の生活にしみ込んだBGMのような音楽。それらを海外の人が聴くとこんな風に響くのかと、ちょっと耳からウンコがでるような心持ちです。(汚い)
ずっと以前に、海外でランドセルを愛用しているイギリス人女性の話を聞いたことがあります。日本を旅行した際に見つけたランドセルを気に入り、購入して自国で愛用しているとのこと。日本人の友人が、「それは子供の持つものなのよ」と何度説明しても、「だって丈夫だし便利だしかわいいし、私が気に入ってるんだからいいじゃない?」とまったく取り合わないらしいのです。でも確かにそう言われれば、子供が持つカバンだと決めつけているのは、私たち日本人だけであって、その観念を捨ててしまえば、大人が持って不都合なことはなにひとつないはず。この「Yakiimo」の歌を聴いて、なんだか不意にそんなエピソードを思い出しました。
身の回りにある「ありふれた」と自分で決めつけている何かを、別の角度から見ることの面白さ。簡単そうで意外と難しいこの作業は、けれどやってみると想像以上に楽しく、もしかしたら「手垢のついた日常」を「初めての外つ国を訪れる旅」に変えてくれるような、素敵な魔法の術なのかもしれません。