191日目。今頃かい!的な話題ですが、マイケル・ジャクソン氏が鬼籍に入られました。すでに2週間ほど経ちましたが、いまだその衝撃は覚めやらず、メディアは彼の功績と軌跡を称える特集で溢れかえっております。ボクは決して彼の大ファンと呼べるリスナーではありませんでしたが、それでもやはり中学生の時には『スリラー』のPVに感動し、学校のワックスがけ直後の廊下でムーンウォークを練習したり、股間を握って「ポーゥッ!」とか叫んだりしていたものでございます。50歳とは若すぎる。どうしてもというなら、せめて復活ライブを成功させてからにしてほしかった。なにはともあれ、マイコー・ハズ・ゴーン。チーン。なむなむ。
昨日はロサンゼルスのステイプルズ・センターでマイコーの告別式が行われました。1万1千枚のチケットに、1時間半で5億アクセスがあったという前代未聞のフューネラル。マライア・キャリー、スティービー・ワンダー、ライオネル・リッチーなど、マイケルと親交の深かった大物ミュージシャンが追悼の曲を演奏するという豪華なラインナップでしたが、なによりもボクの(たぶん皆さんも)印象に残ったのは、11歳になる娘・パリスちゃんが最後に語った短いコメントでした。
Ever since I was born, daddy has been the best father you could ever imagine. And I just want to say that I love him so much.
私が生まれてからずっと、パパは最高のパパでした。パパを愛してたって、ただ言いたかったの。
このコメントのポイントは“I just want to say that I love him so much”の、三人称の使い方。彼女は最後に、マイコーに向かって「愛してる」と語りかけたのではなく、第三者の世間(ボクたち)に対して「私はパパを愛してる、とここで言いたい」と宣言したのです。考え過ぎかも知れませんが、ボクにはそう聞こえました。
いつも外出中は変なお面をつけさせられたり、ベランダのバルコニーから弟が宙ぶらりんにされたり、明らかに血がつながってねえだろうと揶揄されたり、口さがないマスコミのウワサが、きっと彼女にも届いていたでしょう。そうでなくとも、子供にまつわる事件には事欠かなかった、あのマイコーです。
彼の子供たちはどう思ってるのか? あんなお面をつけさせられてイヤじゃないのか? そもそも幸せなのか?などと、おせっかいな親戚のババアのように余計な憶測を膨らませていた世間に向けてパリスちゃんは、泣きじゃくりながらもはっきりと「最高のパパだった!私は彼を愛していた!」と言い放ちました。その気丈な言葉に、ボクの心は打たれたのです。
音楽的才能は疑う余地のない天才でしたが、近年はスキャンダルや奇行ばかりが報道され、すっかり変人扱いされていたマイコー。無罪にはなったものの、その裁判の費用で財産を持ち崩し、悪意のあるメディアにその転落ぶりを面白おかしく報道されつづけたマイコー。白人でも黒人でもなく、男でも女でもなく、大人でも子供でもないサンクチュアリにたどり着くために、自分の体をボロボロにし続けたマイコー。その波瀾万丈かつ険阻艱難な人生の終わりに、その生き様と人格をパリスちゃんは最後の最後に保証したのです。最高の父親だったと。
世界中の人から音楽家としての功績を讃えられるより、マイコーにとっては意味と価値のある言葉だったはず。よかったね、マイコー。本当の意味で、ユー・アー・ノット・アローン。安らかに。なむなむ。
最後になりますが、今日紹介するのはマイコーのボサノバ・カバーアルバム。奇しくもパリスちゃんと同い年の女の子が、ジャクソン・ファイブ時代からのマイコーの名曲をカバーしています。『You Are Not Alone』は、まるでそのままパリスちゃんの心のようで、素晴らしく泣けます。