180日目。いい歳こいていつまでも天の邪鬼なので、誰かに褒められると怖くなるし、なぜか優しくされると寂しくなるし、逆に冷たくされると燃え上がるしで、どうにもこうにも扱いづらいダメ親父に成り下がりつつあります。世間的に売れてたり評価が高いモノには、『じゃあオレが好きにならなくてもいいワケだな?』などと嘯(うそぶ)き、はなっから自分の範疇外に置いてしまったりします。んで、ある日偶然にその「話題の何か」に触れてみると、これがバッチ自分好みだったりして、『なんで教えてくれなかったんだ!』などと、逆ギレして人に当たったりします。元祖天才ダメ親父。今回もこんな素晴らしいアルバムを、危うくスルーするところでした。アブねえ、アブねえ。
最近CDショップのポップや、iTunes Storeのリコメンド枠などで、よくジャケットを拝見していたこのアルバム。ノートに落書きで描いたようなアニメキャラの女の子のイラストに、「33:21」の文字。「33:21」がバンド名? それともアルバム・タイトル? よくわからんのですが、どうにも売れてるらしく、iTunes Storeの総合チャートで1位、オリコンの1月6日のデイリーチャートでも1位というブレークぶり。わかった、アレだろ。アニメの声優さんとかが歌ったアニソン・ポップスとかなんだろ? ああ、いいやいいや。オレはいいや。
なんつって勝手に中身を想像して、聴かなくてもいいことにしておったのですが、本日レンタルCDショップの棚でこのアルバムを発見。まあちょっとだけ聴いてみるかと、他のCDと一緒に借りてきたワケですが、一聴しただけで、もう他のCDはそっちのけ、延々とこのアルバムをエンドレス・リピートしております。これはヤバいです。クセになります。
「33:21」は、バンド名でもタイトルでもなく、単純にアルバムの再生時間。紛らわしいなあ、もう。バンド名は「相対性理論」で、アルバム名は『ハイファイ新書』でした。「相対性理論」は、06年に東京で結成されたバンドで、07年に自主制作でリリースしたミニアルバム『シフォン主義』が、ライブ会場と通販だけで4,000枚を売上げ、08年にリマスター盤が全国流通に乗るやいなや、タワーレコードのインディーズチャートで1位を獲得するなど、大反響を呼びます。
バンドの構成は、ボーカルの紅一点・やくしまるえつこと、ベースの真部脩一、ギターの永井聖一、ドラムの西浦謙助の4人。全曲のソングライティングはベースの真部氏が担当しています。
このバンドの特徴は、なんといってもまず楽曲。韻と音で遊んだ脈略のない歌詞ながら、アルバムの主人公を女子高生に設定して、全曲を通してひとりの少女が語るかけるという形式をとった、独特の世界観。
そしてボーカル。原田郁子を彷彿とさせる、舌足らずなエロさを含んだその声は、決してボーカリストとしての技量が高いワケではありませんが、このバンドの楽曲にはピッタリな歌声。吐息にも似たブレスの音や、高音域の微妙な揺れ。もしかしたら計算?とも思わせる、小悪魔さを感じさせます。簡単に言うと、萌えます。
70年代を思わせるテケテケ・サウンドに、シュールな歌詞。リフレインを多用した、一度聴くと延々と脳内リピートを始めるキャッチーなメロディー。「ミドリ」の狂気と「RADWIMPS」の繊細さを足して、デビュー当時の椎名林檎のインパクトで割った感じでしょうか。どんな感じやねん。とにかく素晴らしい。ダメ親父も納得のニューカマーです。