CD

【無人島140日目】原田知世 “music & me”

投稿日:

music & me

music & me

  • アーティスト: 原田知世
  • 出版社/メーカー: ヒップランドミュージックコーポレーション
  • 発売日: 2007/11/28
  • メディア: CD


140日目。20歳になった時は、なんとも照れくさいような晴れがましいような気がしました。30歳になった時は、ずっと歩いてきて初めて立ち止まって振り返った時のような、途方に暮れたような感慨深いような感じがしました。今年、ボクは誕生日を迎えると39歳になります。四十路リーチ。一体全体、来年どんな風に40歳を迎えるのか、今からドキドキでございます。やっぱホテルの最上階のスイートルームで、ガウンに身を包んでブランデー片手に、ブロンド美人とカウントダウンって感じでしょうか? どんなイメージやねん。もっと普通に、もっとナチュラルに、そう例えばこの人のアルバムみたいに。



原田知世は67年生まれ。82年にデビューし、83年の名作映画「時をかける少女」でスターダムに昇りつめてから早や四半世紀。いつまでも変わらぬその凛とした横顔と、しゃしゃり出ない慎ましさがボクは大好きなのですが、昨年40歳をお迎えになられた彼女が、デビュー25周年アニバーサリーとして5年ぶりにリリースしたのが、この「music & me」というアルバムです。プロデュースには、青柳拓次、高田漣らとの親交も深い、MOOSE HILLこと伊藤ゴロー氏を迎え、ゲストには彼女の音楽性に大きな影響を与えた大貫妙子と鈴木慶一、そして高橋幸宏、キセルなどを迎えて作られた、実に完成度の高い作品です。

正直デビュー当時はお世辞にも歌がお上手とは言えなかったし、今でもその声量のなさとブレスの癖は健在(?)なのですが、落ち着きと包容力と少女性の残る表現力は、そんな些細な欠点は逆に長所に変えてしまうほどの鮮やかさです。ボクは彼女が94年にリリースした「カコ」という洋楽のカバーアルバムがとても好きなのですが、「カコ」にも通じるユーロポップな感じを残しつつ、より肩の力が抜け、芳醇かつ贅沢に年を重ねたイメージが、このアルバムにはあります。アルバム収録曲で、キセルがこのアルバムのために書き下ろしたが「くちなしの丘」を聴いてもらうと、なんとなくボクの言ってる意味が伝わるでしょうか。









好みは人それぞれですが、ボクは10代や20代のころの彼女よりも、40歳の今の原田知世のほうがずっとキレイだと思うし、歌唱力も表現力も遥かに上だと思います。歌手としてのセールス的なピークは、デビュー直後だったかも知れませんが、この人の表現者としてのピークは、今なんじゃないかと思わせるほどの、ハッとするものが、この「music & me」というアルバムにはあります。

一年後にどんな顔をして40を迎えるのかは、まったくもって分かりませんが、どうせやってくるのですから、ドアを開けたとき「お、いらっしゃい。よく来たな!」と笑顔でお出迎えしてあげたいものです。もちろん、ブランデー片手のガウン姿で、手のひらを上にした手招きが基本です。どんなイメージやねん。

-CD

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

【無人島255日目】荒井由実 『ひこうき雲』

ひこうき雲 255日目。スタジオ・ジブリ最新作『風立ちぬ』。みなさまはもうご覧になりましたでしょうか? ボクは先週末に鑑賞してきたのですが、いやはや、実に素晴らしかったです。『紅の豚』で描いたポルコ・ …

【無人島296日目】竹原ピストル 『PEACE OUT』

PEACE OUT (初回限定盤CD+DVD) 296日目。四十路も後半になると、どうも手元にピンが合わなくなったり、あるはずのない場所に長い白髪を発見したり、走れば間に合う電車をすぐあきらめたりと、 …

no image

【無人島158日目】古明地洋哉 “想いが言葉に変わるとき”

想いが言葉に変わるとき アーティスト: 古明地洋哉,弥吉淳二 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント 発売日: 2004/04/21 メディア: CD 158日目。今日は七夕です …

no image

【以前の無人島6日目】野狐禅 “東京23区推奨オモイデ収集袋”

東京23区推奨オモイデ収集袋(通常盤) アーティスト: 竹原ピストル,濱埜宏哉 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント 発売日: 2004/11/17 メディア: CD 6日目。森の小熊バーで …

【無人島290日目】Suchmos 『MINT CONDITION』

MINT CONDITION 290日目。ランチ時に外に出たら、頭上の高いところから、今年最初の蝉が鳴いておりました。日本人は蝉や鈴虫などの虫の音を、言語と同じ「左脳(言語脳)」で聞いていて、これらを …