140日目。20歳になった時は、なんとも照れくさいような晴れがましいような気がしました。30歳になった時は、ずっと歩いてきて初めて立ち止まって振り返った時のような、途方に暮れたような感慨深いような感じがしました。今年、ボクは誕生日を迎えると39歳になります。四十路リーチ。一体全体、来年どんな風に40歳を迎えるのか、今からドキドキでございます。やっぱホテルの最上階のスイートルームで、ガウンに身を包んでブランデー片手に、ブロンド美人とカウントダウンって感じでしょうか? どんなイメージやねん。もっと普通に、もっとナチュラルに、そう例えばこの人のアルバムみたいに。
原田知世は67年生まれ。82年にデビューし、83年の名作映画「時をかける少女」でスターダムに昇りつめてから早や四半世紀。いつまでも変わらぬその凛とした横顔と、しゃしゃり出ない慎ましさがボクは大好きなのですが、昨年40歳をお迎えになられた彼女が、デビュー25周年アニバーサリーとして5年ぶりにリリースしたのが、この「music & me」というアルバムです。プロデュースには、青柳拓次、高田漣らとの親交も深い、MOOSE HILLこと伊藤ゴロー氏を迎え、ゲストには彼女の音楽性に大きな影響を与えた大貫妙子と鈴木慶一、そして高橋幸宏、キセルなどを迎えて作られた、実に完成度の高い作品です。
正直デビュー当時はお世辞にも歌がお上手とは言えなかったし、今でもその声量のなさとブレスの癖は健在(?)なのですが、落ち着きと包容力と少女性の残る表現力は、そんな些細な欠点は逆に長所に変えてしまうほどの鮮やかさです。ボクは彼女が94年にリリースした「カコ」という洋楽のカバーアルバムがとても好きなのですが、「カコ」にも通じるユーロポップな感じを残しつつ、より肩の力が抜け、芳醇かつ贅沢に年を重ねたイメージが、このアルバムにはあります。アルバム収録曲で、キセルがこのアルバムのために書き下ろしたが「くちなしの丘」を聴いてもらうと、なんとなくボクの言ってる意味が伝わるでしょうか。
好みは人それぞれですが、ボクは10代や20代のころの彼女よりも、40歳の今の原田知世のほうがずっとキレイだと思うし、歌唱力も表現力も遥かに上だと思います。歌手としてのセールス的なピークは、デビュー直後だったかも知れませんが、この人の表現者としてのピークは、今なんじゃないかと思わせるほどの、ハッとするものが、この「music & me」というアルバムにはあります。
一年後にどんな顔をして40を迎えるのかは、まったくもって分かりませんが、どうせやってくるのですから、ドアを開けたとき「お、いらっしゃい。よく来たな!」と笑顔でお出迎えしてあげたいものです。もちろん、ブランデー片手のガウン姿で、手のひらを上にした手招きが基本です。どんなイメージやねん。