122日目。映画『ヘドウィグ&アングリーインチ』を撮った奇才ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の、5年ぶりの新作『ショートバス』を観てきました。「セックス」をテーマにしたこの映画は、過激な性描写で話題になっている作品だとか。そ、それは観ねばですな!(←エロ親父)っつうことで、単館上映中の渋谷の映画館までいそいそと足を運んでみました。混んでるのかと思いきや、意外とガラ空き。観始めてすぐに理由が分かりました。過激過ぎ〜どんだけ〜! まだ手も握っていない彼女とのデートにこの映画を選んだら、ソッコーでふられること間違いナシ。逆にこの映画で彼女の目がうるうる潤んだりしていたら、それはそれで後が怖い気がします。
これから観る方もいらっしゃるでしょうから、あまりストーリーについては触れませんが、核となっているのは「セックスしねえと分かんねえこともたくさんあるけど、セックスしたって分かんねえこともたくさんあるぜ」みたいなこと。親も学校もちゃんと教えてくれなかったから、独学で勉強してきたけれど、これって本当にあってる?っていう、実はみんなが心のどこかで思ってる「性」というジャンルを、真正面から捉えるとこういう映画になるんでしょう。
ものすごい性描写がこれでもか!というくらい映されていますが、不思議と単なるポルノに陥っていないところは、さすがジョン・キャメロン・ミッチェル。好き嫌いは別にして、あまり観たことのない感じの映画だったし、劇中にでてくる“It’s just like the 60’s, only with less hope”(60年代みたいでしょ? あの頃みたいな希望はないけど)という台詞に、監督の狙っている空気のようなものを感じました。
そして何よりも素晴らしかったのが、音楽。『ヘドウィグ〜』ではグラム、パンク、グランジをメインとしたロック・ミュージカルに挑戦していましたが、今回はおしゃれで心優しいアコースティック音楽をメインにした、実にチャーミングなサウンド。特筆すべきは、シンガーとして映画にも登場しているScott Matthew。日本のアニメ「攻殻機動隊」などのサントラにも参加したことのある彼は、ニューヨークで活動中のオーストラリア人シンガーソングライターで、まだ自分名義のソロアルバムは出していませんが、このサントラで注目を集め、現在ソロデビュー作の制作中だとか。
特にボクがグッときたのは、「Language」という曲。YouTubeでライブ音源を見つけたので、つけておきましょう。
キミと秘密の握手をした
ボクの言葉で話をした
もう信じるのはやめたんだ
キミは去っていく
喧嘩しているふりをした
キミがそばにいないから
たやすくボクは消えていく
木の葉の隙間をぬけていく
天国を夢見たけれど
今は苦しみにしか見えないよ
ゴーストは最後に勝つだろう
ボクの中で 首の周りで
そいつはずっと寝ているボクを
指でつついているんだよ
キミと秘密の握手をした
ボクの言葉で話をした
もう信じるのはやめたんだ
キミは去っていく
意味不明な歌詞ですが、それはボクの駄訳のせいです。恋人と別れた男の、絶望を淡々と歌っています。ええ曲です。この曲以外にもスコットくんはこのサントラに5曲提供していて、「In The End」という曲はこの映画のクライマックスで使用されております。映画は賛否両論ありそうな問題作ですが、OST(オリジナルサウンドトラック)は、間違いなしの名盤。サントラだけでもどうぞ。