95日目。わわわ。また2週間もブログの更新をサボってしまった。いかんいかん。うお〜!さお〜!などとしてる間に、ツルツルと時間は過ぎていってしまいますな。玉手箱など空ける必要もなく、このままドロンと爺さんになってしまいそうな予感。おとろしいです。もちっと時間をゆっくり動かせないモンでしょうか。立ち止まる。空を読む。葉裏の戦ぎや芽吹き掛けの新緑の匂いを吸い込む。過ぎていく時間にそっと耳を澄ましてみる。そう。ちょうど、この人の歌のように。
寺尾紗穂。元シュガーベイブのベーシストであられた寺尾次郎氏をお父上にもつ、シンガーソングライター。大学時代に結成した「Thousands Birdies’ Legs」というバンドのヴォーカルとして現在も活動中ですが、今年の4月に、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たしたばかりの新星です。弱冠25歳。
彼女やっている音楽を簡単に説明すると、矢野顕子のピアノと、大貫妙子の声と、吉田美奈子の歌唱力と、YUKIの感性を合わせて、マーブルチョコにした感じです。古風でもありつつ、けれど普遍的な世界。癒し系とはちょっと違うんだけど、気持ちの隙間につるりと入り込んで、内側から背筋を伸ばしてくれるような、不思議な力のある音楽です。
ボクはこの彼女のメジャー・デビューアルバム「御身」と、インディーズから出した「愛し、日々」の2枚を聴きましたが、両方ともほぼ全曲ピアノ一本の弾き語り、しかもきっと一発録りの、緊張感とぬくもりのある名盤です。どの曲も、「喪失感」と「残されたものの視点」をテーマにしていて、いなくなった猫や、消えたシャボン玉や、失ってしまった大切な人に、「私はあなたがいなくなった後、こんなふうにして暮らしてるんです」という私信の内容のような、淡々とした孤独が描かれています。
「愛し、日々」に収録されている、猫のいなくなった夜の寂しさを綴った『猫のいない夜』と、「御身」に収められた、その後しばらくして似たような猫を見かけたんですがよく見たら違いました、という内容の『猫まちがい』は、「寺尾さんちの猫、まだ帰ってきてないの?」みたいな、友達的な心配すら喚起してしまう、見事な連作。
生活の中でするっと見過ごしてしまいがちなもの。真昼の月のように、かすかでおぼろげだけど、でも確かにあるもの。そういうものを、ひとつずつちゃんと愛でることができないと、こういう歌は作れんでしょうな。ボクとは違う時間の流れの住人なのだと思われ。うお〜さお〜!