72日目。クリント・イーストウッド監督作品「硫黄島からの手紙」を観てきました。むっちゃいい映画でんな。役者もバッチリはまってるし、ちょっと彩度を落とした青黒い映像も美しい。声高な反戦映画でもなく、自決した人間を英雄化することもなく、どうしようもない時代に飲み込まれてしまった、どうしようもなくフツーの男たちの、どうしようもない運命を、淡々と描いてる。今まで観た戦争映画の中で、ボク的には一番グッとくる作品でした。唯一残念だったのは、コレを日本人じゃなく、アメリカ人が作ったってことでしょうか。日本人が作るべき映画だよな、コレは。
TéTé。テテって読みます。パリ在住の31歳。セネガル人の父と西インド諸島出身の母親との間に生まれ、2歳の時にフランスに移住。ストリートやライブハウスでの活動を経て、01年にデビュー。04年にはフランスのグラミーにあたる「ヴィクトワール賞」を受賞するなど、母国では絶大なる人気を誇るシンガーソングライターです。
生来移民であるテテの書く歌は、とてもメッセージ性が強く、反戦や人種差別、宗教問題などを扱った社会派の作品が多いです。って言っちゃうと、どうにもこうにも堅苦しい印象になりますが、そうと感じさせないのが彼の歌のスゴイところで、メランコリックなアレンジと、ファルセットを巧みに織り込んだ歌声は、実に明るくポップでファンキーです。そのメロディの明るさと、歌詞に秘められた暗闇が、ホログラムのようにチラチラ見え隠れするのがおもろいのです。
彼の最新アルバム「Le Sacre des Lemmings」は、日本語の訳すと「レミングの祭典」。「レミング」とは北極圏に生息するネズミの一種で、個体数が増えすぎると、本能的に何千というレミングが一斉に崖から海に飛び込むという、不思議な動物。このアルバムでは、「レミングの黎明」「レミングの祭典」「レミングの黄昏」という3曲のインストをベースに、見えない崖に向かって奔走する人間たちの愚かな行為を、極上のノリノリポップスで、キャッチーに歌い上げるという、なんとも不思議な作品に仕上がっています。
さて、お得意のYouTube。自分でアップしてみた。「シャムの息子たち」と訳されたこの歌は、こんなおどけたファンキーなサウンドに乗せて、奴隷として迫害されつづけた黒人民族の、暗い諦念を綴っています。
「硫黄島からの手紙」では、捕虜として捕らえた若いアメリカ兵が、懐に大切に抱いていた母親からの手紙を訳してみると、それはまったくそのまま、自分のおふくろからの手紙の内容と同じだった、という挿話がありました。皮膚の色が違っても、その下に流れる血の色は同じだし、信じる神が違っても、多かれ少なかれ、その神の説く愛の意味は同じはず。「硫黄島〜」もテテの歌も、多分そういうことを言ってるんだとボクは思うんです。