41日目。まだ身近な人を亡くしたという経験がほとんどないので、肉親や子供、恋人や家族といった空気にも似た存在がフイにいなくなるということが、どの程度の衝撃なのか、よくわかりません。でもなんとなく最近、そういう人たちを亡くすということは、何かを「失う」のと同時に、それと同じくらいのものを「受け取る」ということなんだろうなーと思ったり。遺品とか遺産相続とかそういう意味じゃなくてね。なんつうか、目には見えないけれど、確実に生きるパワーにつながるなにか。残されたものに渡される、喪失の悲しみに負けないための力、みたいなものがあるようなないような。
愛する者が亡くなったことをベースに作られた歌というのは、古今東西たくさんあります。例えば、有名どころだとエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」なんかは、事故死した彼の息子に捧げられた歌だし、中島みゆきの「時代」なんかも、彼女のお父様が亡くなられた時に作られた歌だと言われています。最近だと「涙そうそう」は、森山良子が亡くなった弟さんに向けて書いた詩です。
いずれも名曲揃いなのは、それだけ特別な想いが込められているからでしょうが、感傷的で湿ったバラードになりがちのこのジャンルで、昨年YUKIが、突然死した息子のために作ったと思われる「長い夢」は、近年稀に見るポップで前向きで、そして真摯な傑作でした。
ベル鳴らしては叫んで逃げた
強者の群れは恐れをなしてた
蟻の行列を潰し歩いた
鍵はいつでもすぐに失くした
淋しがりやは誰だ?
手を叩いては喜んでた
私達の間には壁はもう無いのよ
バイバイ長い夢
そこへ行くにはどうすればいいの?
迷子になるよ道案内してね
バイバイ長い夢
いつか完璧な環になるように
次の手を教えていて
息子にピンポンダッシュさせてたんかい!って突っ込みはさておき、彼女がどんなふうに息子と接し、どんなふうに遊び、彼がどんなことで笑っていたのかが、短い言葉の中で愛情深く描かれていて、もうそれだけで泣きそうになります。
冒頭に書いた「愛するものが亡くなった時に受け取るなにか」の答えが、この歌にはぎっしり詰まっているような気がします。先に逝ったものたちと、あとに残されたものたち。YUKIは確実に息子さんからなにかを受け取り、いつか彼と「完璧な環」になるために、歌い続けていくんでしょうな。
なーんつって、ここまで書いといてから、よく調べたら、この歌はたまたまリリース時期が息子さんの死に被ってしまったため、そういう内容の歌に捉えられがちなだけで、実はずっと前からできていた曲なんだそうです。タイトルも本当は「バイバイ」だったのを、意味深すぎるのでわざと「長い夢」に変えたんだとか。……おいおい、どうすんねん、このレビュー。ここまで書いて、そりゃねえだろ。おい。
今月「長い夢」も収録された彼女の4THアルバム「Wave」が発売されました。個人的にはKT Tunstallが作曲した「バースディ」や、スキマスイッチが参加した「You’ve got a friend」がよかったな。ハイ!終わり! おい!逃げんのか!? おい!