31日目。ねえ、ボクたちの出会いを覚えてる? ボクは運命とかかなり信じちゃうタチだから、これはやっぱり運命だと思う。笑ってもいいよ。つうか笑え。こんちは、ハチ(男・37・チョンガー)っす。男兄弟しかいず、男子校出身なせいか、女の子同士の友情とかには萌えます。次に生まれ変わったら、「ヴァージン・スーサイズ」みたいな、超カワイくて、でも不安定で、気だるくて、むちゃむちゃ残酷な女の子とかになってみたい。男子には解らん言葉でコソコソ話して、クスクス笑って、たまに万引きしたり、暇つぶしに小動物殺したり、気まぐれにリストカットしたりしてみたい。どんな夢やねん。今回はそんな(?)ガーリーな世界がみっちり詰まったこの本をご紹介。
弱冠22歳の新人・前川梓が上梓した「ようちゃんの夜」は、ふたりの女子高生が主人公。色白で美人で、ちょっと不思議ちゃん系な「ようちゃん」と、そのようちゃんに憧れる「あさこ」。ただのクラスメイトだったふたりが、あるコトをきっかけに急速に仲良くなり、そして離れていくまでの濃密な数ヶ月を描いた作品です。第1回ダ・ヴィンチ文学賞の大賞受賞作。
同性の友達に憧れて、笑い方や文字の書き方、モノの見方や考え方までをも、その人に同化していくってのは、女の子特有の世界でしょうか。「真似」ではなく「同化」。大好きなようちゃんに、自然に似通っていくことに、戸惑いと快感を覚えながら、あさこはようちゃんに心酔していきます。
そんなあさこに助長されていくように、ようちゃんは自分だけの世界を築き上げていきます。やがて彼女はその世界だけでしか生きられなくなり、外部とのコンタクトを閉ざしていく。あさこは、そこからようちゃんを助けたいと思うのだが……というのがおおまかなストーリー。
小説というよりも映画のシナリオを読んだような読後感。場面や時間が交差し、出会いのシーンや、印象的な夜のバス停のシーンが、きれいにカットバックされていく構成は、実に映像的だし、小物として使われる「黄緑色のフェンス」や「薄いピンク色の水玉のお皿」などの描写も、絶妙に可愛らしく、そして巧みです。
ようちゃんといると、私は少しだけ、狂えてくる。
私は、だから、ようちゃんとの時間が好きだ。
「17歳のカルテ」や「花とアリス」、そして最近だと「NANA」のようなふたりの女の子の友情物語は古今東西ありますが、ちょっと作りモノっぽい匂いのする作品の多いこのジャンルで、「ようちゃんの夜」は男のボクが読んでも共感できる珍しいガーリー小説でした。男女の違いはありますが、松本大洋の「GOGOモンスター」にでてくる「雪」と「マコト」の関係に近いなーと思った。性別問わず、大人になる前の、本能で嗅ぎ分けた友人との関係ってのは、どこか濃密で危うい匂いのするモンなのかもしれません。
いいなあ、思春期の可愛い女の子って。オレもようちゃんとアイス食いながら妄想トークとかした〜い。男・37・チョンガー。これじゃ変態。笑ってもいいよ。