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【無人島24日目】森絵都 “風に舞いあがるビニールシート”

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風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート

  • 作者: 森 絵都
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 単行本


24日目。本を読むの好きだし、一生に一度くらい、自分の名前で本を出してみたいです。長編の小説は、この飽きっぽい性格ではちょっと難しそうですが、短編くらいなら書けんじゃねえかな? 「劇団ひとり」だってできんだから、オレだってできるべさ? よし、ちょっと勉強してみようかな。まずは質の良い短編集を読んでみる。コレ基本。例えばこの本なんかどうだ?



森絵都の「風に舞いあがるビニールシート」。先日発表された第135回直木賞受賞作です。ボクの知人に「歌人」という珍しい職業の人がいて、彼がこの本をベタ褒めしていたので、どれどれと読んでみました。

6編からなる短編小説で、登場人物は国連難民事務所で働く女性だったり、夜間の二部大学に通う社会人学生だったり、客のクレーム対応に出向く疲れたサラリーマンだったりと、ある意味、見事なほど共通性のないシチュエーション。しかも1編ずつ特殊な分野を軸として扱っていて、岐阜の美濃焼だったり、犬の保健所だったり、不空羂索と呼ばれる仏像だったり、アフガンの難民問題だったりと、実に多彩。それらひとつひとつを、よくぞここまで調べたなと思わせるその探求力と、それを物語の彩りとしてサラリと見せることに成功している著者の手腕に、まず感服です。

そしてその、なんのつながりも持たない6つのストーリーに、唯一共通しているものがあるとすれば、登場人物の第一印象が、読み終える頃に見事に覆されるっていうところでしょうか。特に1編目の「器を探して」は傑出。向田邦子の筆致を彷彿とさせる語り口には、見事な騙し絵を見せられたあとのような、背筋がひやっとする余韻が残ります。3編目の「守護神」も同じように巧みですが、こちらは清々しい読後感。表題作「風に舞いあがるビニールシート」は、他のストーリーに比べれば、予測できるラストでしたが、泣かせよう泣かせようとする昨今の陳腐な小説では味わえない、「不覚にも涙が出る」というヤラレタ感を味あわさせてくれます。

力量のない小説家(劇団ひとりのことではないです)の本は、「オレも小説家になれるかも」という甘い夢を与えてくれますが、本当に優れた短編小説は、「オレには絶対書けねえな」という敗北感をもたらせてくれますな。教材のつもりで読んだのに、すっかりやる気喪失。無理無理。オレには無理。

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