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【以前の無人島25日目】町田康「告白」

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告白

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  • 作者: 町田 康
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/03/25
  • メディア: 単行本

25日目。さて久しぶりに長い小説にでも取り組んでみましょうか。ボクは短編小説が連れて行ってくれる小旅行的なマインドトリップも大好きなのですが、著者の思考の海にどんぶらこ漕ぎ出し、何日もかけてフロンティアを目指す船旅のような長編小説も大好きです。さて今回乗り込んだのは、「町田康」丸。初めて乗る船でしたが、なかなかタフな旅になりました。

昨年谷崎潤一郎賞を受賞した、読売新聞で連載されていた小説の書籍化です。題材となっているのは、河内音頭として今も語り継がれている「河内十人斬り」という明治時代に実際に起こった連続殺人事件です。城戸熊太郎という男が、河内(東大阪)の田舎町で一度に10人もの人間を殺傷したこの事件は、その被害者の中に熊太郎の妻や義母までも含まれていました。さて、なぜ熊太郎はそんな残忍な大量殺人を犯したのか。そもそも人はなぜ人を殺すのか。それを、熊太郎の幼少時の出来事から紐解いていく、混沌とした人間長編小説なのであるある。
って書くと、うわ〜暗くて重そうだぜ、って思いますが、これが楽しく読めるのです。もともとミュージシャンだった町田康の語り口は、まるで上質の落語を聞いているかのようなテンポの良さ。時に大笑いできるし、熊太郎自身の気持ちになって涙が出そうにもなります。
これから読む方もいらっしゃるでしょうから、細かいストーリーは省きますが、ボクは熊太郎が好きです。彼の持つ、「自分の考えていることをうまく言葉にできなくて、頭で考えているうちにこんがらがっちゃって、結果言っちゃった言葉が意味不明」っていう思考癖は、多かれ少なかれ誰でも持っているものじゃないでしょうか。
自分にはどうしてもうまくできないことを、さくさくこなしてしまう器用な人間に対する憧憬と憤り。なぜ人に分かってもらえないのだろうという焦りと悔しさ。やっぱりオレはちょっとおかしいんじゃねえか?と思ってしまう時の、恐怖と孤独。軽快でユーモアのある語り口で綴られているので、思わず吹き出しつつも、熊太郎の心理と葛藤は読み手の胸を深く深く突いていきます。
「人はなぜ人を殺すのか?」。この本の帯にもなっているキャッチコピーですが、結局最後まで読んでもその答えはありません。代わりに「人はなぜいつも孤独なのか?」という問いに対する答えが、この小説の最後に、ほんの少しだけ見える気がします。

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