BOOK

【以前の無人島20日目】よしもとばなな「みずうみ」

投稿日:

みずうみ

みずうみ

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: フォイル
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本

20日目。翌朝、きれいに晴れた空を見上げつつ、ボクは森の奥へ入って行きました。けもの道をつたい、のんびり歩いて行くと、突然森が開けてそこに美しいみずうみがありました。しんと静まりかえった水面は、まるで空を映すための鏡のように、ただ黙って静かに横たわっています。水辺に腰を下ろし、ボクはこの本を読み始めました。

先月出たよしもとばななの新作です。ボクは彼女の描く世界が好きで、新刊が出るたびに買ってしまいます。「キッチン」でデビューした直後は、女子高生の愛読書的な扱いをされていましたが、そんなミーハーファンを次々と切り捨てていくような渋い作品を上梓しつづけ、彼女は「ばななワールド」を驀進しています。
この本、まず装丁が美しい。「100万部突破!」「映画化決定!」「泣けます!」みたいな下品な帯がどの本にもついている中、この「みずうみ」だけ帯をつけず、裸のまま本屋に並べられています。カバーの写真は、これもボクの大好きな写真家、川内倫子さんの美しいフォトグラフ。ボク的には、もうそれだけで買いです。ジャケ買いです。
内容は相変わらず彼女のオハコである、「変な環境で育ってしまった主人公が、これまたおかしな育ち方をした異性と出会って恋に落ちるラブストーリー」です。新興宗教が絡んでくるのと、主人公が絵描きという設定なので、今回の作品は特に「ハチ公の最後の恋人」に近いです。
特に大きなドラマもなく、淡々と物語は進みます。後半ちょっとした謎解きはあるけれど、それも大した展開ではありません。彼女の作品は、ただただ日常の中にいて少し弱っている人間が、ささいなきっかけを光として、少しずつ再生していく過程を丁寧に丹念に描いていきます。
「ほんとうに人を好きになるということが、今、はじまろうとしていた。重く、面倒くさいことだったが、見返りも大きい。大きすぎて、空を見上げている気持ちになる。飛行機の中で、光る雲を見ているような気持ちに。それは、きれいすぎて悲しい気持ちととてもよく似ている。自分がこの世界にいられるのが、大きな目で見たら実はそう長い時間ではないと気づいてしまう時の感じに、とてもよく似ていたのだ。」
うーん。まさに、ばななワールド。ずいぶん前にインタビューで「私が書くテーマは、死、オカルト、近親相姦。そればっかりです」って言ってましたが、相変わらずそのまんまを突っ走ってますね。どんどん行ってください。ずっとついていきますよ。

-BOOK

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

【無人島114日目】サラ・ウォーターズ “夜愁”

夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4) 作者: サラ・ウォーターズ 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2007/05 メディア: 文庫 114日目。今のボクは、突然今のボクになっ …

no image

【無人島94日目】枡野浩一 “ショートソング”

ショートソング (集英社文庫) 作者: 枡野 浩一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/11 メディア: 文庫 94日目。昨日の「昭和の日」振替休日は、友人知人総勢10名で、多摩川べりでバ …

no image

【以前の無人島34日目】劇団ひとり「陰日向に咲く」

陰日向に咲く 作者: 劇団ひとり 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2006/01 メディア: 単行本 34日目。前回、ボクの仕事の話を少し書きましたが、もし今の職業についてなかったら、何をしてた …

no image

【無人島106日目】東直子 “とりつくしま”

とりつくしま 作者: 東 直子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2007/05/07 メディア: 単行本 106日目。先日、入院している友人を見舞いに、新宿にある大きな大学病院まで行ってきまし …

【無人島238日目】山田太一 『空也上人がいた』

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品) 238日目。さて年末ですので、今年のレビューの総決算をしたいと思います。まずはBOOK部門。今年出会って面白かった本と言えば、229日目に紹介した『 …