無人島についた初日。気分はウキウキで、こんなときに渋いジャズなんか聴いてられませんな。かといって、ゴリゴリのハードロックっつうのもちょっと違うだろー。なんつうか、ホリデーチックで、でもいきなりマッタリでもなくて、エッジが効いてて、ワクワク感のあるCDっつうとだな……。これかな。Finley Quayeの97年のファーストアルバム「Maverick A Strike」。
フィンリー・クウェイ。97年にイギリスでデビューしたレゲイ・ポップな兄ちゃんです。ちょうどこの「Maverick A Strike」が出た頃、ボクはロンドンに住んでいて、彼のライブには足繁く通いました。
彼の魅力はなんといってもその声。最初、ちょっとかすれ気味で不安定に聞こえますが、聴き込むとそのザラッとした手触りの中に、わずかに湿った部分があるの気づき、ためらいがちにそっと指で触れてみると、しっとりとしたVibeが指先から体中に流れ込んでくるのです。なんじゃそりゃ。全然分かんないよ。まあまあ。聴けばわかります。
当時はナリモノ入りの扱いで、このデビューアルバムで彼は、イギリスのグラミー賞である「Brit Award」を獲っています。しかし当の本人は実にいい加減な兄ちゃんで、受賞後のインタビューなんかの仕事はことごとくドタキャンし、業界内では「フィンリーする=キャンセルする」という言葉が生まれたほどだとか。ライブでもステージの上で、酒は飲むは「それってタバコじゃないよね?」ってやつを吸うは、もうやりたい放題。(でもステージは素晴らしかったです。)
いい子にしていれば、コールドプレイくらいのビッグになれたかも知れない。でも飼い慣らされたら、この切なく狂おしい声は出なくなるんだろうな。いいよ、ずっとフィンリーしてて。オレは許す。